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西村雅史公認会計士税理士事務所 > ブログ > (税務相談)給与課税?転勤に伴い会社が負担する費用
所得税2020.10.25

(税務相談)給与課税?転勤に伴い会社が負担する費用

(税務相談)給与課税?転勤に伴い会社が負担する費用
A部長
A部長

現在、転勤旅費規程の新設を社内で検討しております。下記の転勤に伴い支出する費用を支給対象としておりますが、所得税法上、課税対象となるか教えて頂けますでしょうか。なお、借家の賃貸契約は従業員個人が締結します。

(1)引越費用

(2)転勤支援金

(3)礼金

(4)仲介手数料

回答

(1)引越費用 ⇒ 課税不要

(2)転勤支援金 ⇒ 課税必要

(3)礼金 ⇒ 課税必要

(4)仲介手数料 ⇒ 課税必要

所得税法上、(2)~(4)は非課税所得とされる「旅費」の範囲には含まれないと考えられるため、これを会社が負担する場合には、給与等として課税する必要があります。

解説

所得税法第9条において、非課税として取り扱われる性質の所得が列挙されており、そのなかに「職務を遂行するために必要な旅費」という規定があります。

実務では、この「旅費」に該当しなければ給与課税することとなりますが、条文、通達を確認してみますと、非常に抽象的な表現を用いて定義しているため、その趣旨を考慮し判断することが必要となります。

今回のケースでは、(1)引越費用は「転任に伴い転居のための旅行をした場合」に該当し、その旅行に必要な支出に該当するため、給与として課税の必要はありませんが、(2)転勤支援金は、既に会社が転勤に伴い必要な費用を支出しているため、更に追加で支給する場合には給与として課税が必要となります。

また(3)、(4)については、転任に伴って支出する費用ではありますが「旅行に通常必要な支出」とは認められないと実務では判断することとなりますので、給与課税の対象となります

なお、「給与課税の必要がある=支給することができない」と勘違いをされることがありますが、支給すること自体は自由にできます。今回のように会社の辞令によって転勤を余儀なくされた従業員にとっては、本来転勤しなければ支出の必要がなかったものですので、これを会社で負担しない場合には不満を生じさせ、場合によっては転勤を拒否される可能性もありますので、税金ではなく、会社の運営を優先させ、敢えて支給対象としている会社も少なくないと思われます

参考条文

所得税法第9条  非課税所得

四 給与所得を有する者が勤務する場所を離れてその職務を遂行するため旅行をし、若しくは転任に伴う転居のための旅行をした場合又は就職若しくは退職をした者若しくは死亡による退職をした者の遺族がこれらに伴う転居のための旅行をした場合に、その旅行に必要な支出に充てるため支給される金品で、その旅行について通常必要であると認められるもの

所得税基本通達9-3  非課税とされる旅費の範囲

法第9条第1項第4号の規定により非課税とされる金品は、同号に規定する旅行をした者に対して使用者等からその旅行に必要な運賃、宿泊料、移転料等の支出に充てるものとして支給される金品のうち、その旅行の目的、目的地、行路若しくは期間の長短、宿泊の要否、旅行者の職務内容及び地位等からみて、その旅行に通常必要とされる費用の支出に充てられると認められる範囲内の金品をいうのであるが、当該範囲内の金品に該当するかどうかの判定に当たっては、次に掲げる事項を勘案するものとする。

(1) その支給額が、その支給をする使用者等の役員及び使用人の全てを通じて適正なバランスが保たれている基準によって計算されたものであるかどうか。

(2) その支給額が、その支給をする使用者等と同業種、同規模の他の使用者等が一般的に支給している金額に照らして相当と認められるものであるかどうか。

※内容は、執筆現在当時の法令等に基づいております。文中の税法の解釈等見解にわたる部分は、執筆者の私見ですので、実際の申告等税法の解釈適用に当たっては、ご本人の責任において行ってください。

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