BLOGブログ
(税務相談)消費税 特定新規設立法人~親会社の前期課税売上高が5億円超のため課税?~

目次

本日は、当期中に新規設立した当社完全子会社の消費税判定が「課税」であることを念のため確認させてください。基礎情報は以下の通りです。
・子会社(3月決算法人):4月1日設立 資本金100万円
・親会社(3月決算法人):前期課税売上高:6億円(上半期2億円)、前々期売上高:4億円
※内容は、執筆現在当時の法令等に基づいております。文中の税法の解釈等見解にわたる部分は、執筆者の私見ですので、実際の申告等税法の解釈適用に当たっては、ご本人の責任において各顧問税理士や税務当局にご確認頂き、行ってください。
質問の回答
貴子会社は、特定新規設立法人には該当しないため、設立1期目については消費税の免税事業者となります。
特定新規設立法人の5億円判定において、親会社決算が子会社設立日前2ヶ月未満で終了している場合には、前期課税売上高6億円は判定対象とならず、前期上半期の課税売上高2億円と前々期課税売上高4億円が判定対象となります。
新規設立法人でも消費税の課税事業者となるケース
消費税の納税義務の有無の判定は、原則として基準期間(判定対象事業年度の前々事業年度)における課税売上高が1,000万円超か否かで判定を行います。
したがって、基準期間が存在しない、設立して間もない新規設立法人については、設立初年度とその翌事業年度までは、原則として消費税の納税義務は免除されます。
しかしながら、設立から2年以内の法人であっても、規模が大きい法人や設立後上半期で多く稼いだ法人など、下記のいずれかに該当する場合には、例外として課税事業者に該当することとなります。
①特定期間(前事業年度開始の日から6ヶ月間)の課税売上高及び給与等の支払額が1,000万円超の場合(設立2期目より)
②新設合併又は新設分割があった場合における特例判定が適用される場合
③基準期間がない法人の期首時点の資本金又は出資金が1,000万円以上の場合
④特定新規設立法人に該当する場合 ←(今回のケース)
⑤消費税課税事業者選択届出書を提出している場合
特定新規設立法人とは
昨今、組織再編等による子会社の設立や、個人やその親族で複数社を所有するといった形態が増加し、その一部で消費税の免税点制度の不適切な利用が行われていたことなどを踏まえ、新規設立法人であっても以下の2要件を満たせば、特定新規設立法人として消費税の課税事業者に該当することとなります。
①特定要件に該当する
特定要件とは、その基準期間がない事業年度開始の日において、他の者により新規設立法人の発行済株式又は出資の50%超を直接又は間接に保有される場合など、他の者により新規設立法人が支配される場合を言います。なお、特定要件に該当するか否かは、その基準期間がない事業年度開始の日の現況により判定します。
②基準期間に相当する期間の課税売上高が5億円超を超えている
特定要件に該当する旨の判定の基礎となった他の者及びその他の者と一定の特殊な関係にある法人(他の者が他の法人の株式等の全部を有する場合における当該他の法人など)のうちいずれかの課税売上高(新規設立法人のその事業年度の基準期間に相当する期間の課税売上高)が5億円超かで判定を行います。
つまり、「他の者」が発行済株式等を50%超保有し、その「他の者」と「他の者が完全支配している他の法人(特殊関係法人)」どちらかの「基準期間に相当する期間」の課税売上高が5億円を超える場合に、特定新規設立法人に該当します。課税売上高が継続して5億円を超えるような法人が50%超出資の子会社を設立する場合には判定を行う必要があります。
特定要件 「他の者」の範囲
「他の者」は、新規設立法人の株主のことですが、間接的に支配していても特定要件に該当します。ケースによっては複数人となるので、判定のポイントをまとめました。
①個人株主は親族等も含めて判定
例えば、社長30%・社長の妻20%・社長の兄10%で新規設立法人の株式を保有している場合、社長とその親族で50%超の保有となるため、特定要件に該当します。
なお、親族等の範囲はかなり広く解釈されており、一般的な親族のほか、事実婚や金銭支援により生計を立てている方、個人事業主の場合にはその使用人もその範囲に含まれます。
②完全支配している法人も含めて判定
他の者が100%支配している法人は、親族等と同様に含めて、他の者のグループとして判定を行います。例えば、社長20%・社長の妻10%・C社(社長100%出資会社)30%を保有していた場合、グループ全体で50%超の保有となるため、特定要件に該当します。
なお、A社が100%子会社であるB社が新規設立法人の50%超を保有しているような孫会社のケースでは、A社もB社も「他の者」に該当することになります。
5億円判定 「他の者が完全に支配している法人(特殊関係法人)」の範囲
特定要件に該当した場合は、続いて、特殊関係法人を抽出するステップに進みます。特殊関係法人とは、特定要件の判定の基礎となった「他の者」と「他の者」の親族等(それらの者に完全支配されている法人を含む)により「完全」支配されている法人をいいます。つまりは、他の者に100%支配されている兄弟会社というイメージです。
ただし、他の者の親族等が100%出資している法人も対象となりますが、別生計の親族については、完全支配会社を保有していても特殊関係法人に該当しないという規定があります。
例えば、完全に独立した兄弟について、兄が100%出資の会社を経営しており、弟が新たに60%出資の会社を設立した場合、兄の会社は特殊関係法人には該当しません。
なお、少しややこしいですが、ここでの間違えやすいポイントとしては、仮に弟の会社に兄が少しでも出資していた場合、兄は特定要件の「他の者」に該当してしまうため、別生計であっても兄の会社は特殊関係法人になります。
5億円判定 「基準期間に相当する期間」
最後に、これまで抽出してきた「他の者」と「特殊関係法人」(以下、判定対象者)の全員について、課税売上高5億円の判定を行います。
この5億円判定の基礎となる「基準期間に相当する期間」とは、原則として、① その新規設立法人の基準期間がない事業年度開始の日の2年前の応当日から同日以後1年以内に終了した判定対象者の年又は事業年度を合わせた期間をいいます。
したがって、いずれかの判定対象者のこの期間における課税売上高が5億円を超えていれば、特定新規設立法人に該当することとなるのですが、仮に5億円以下であった場合は、さらに② 新規設立法人の事業年度開始の日の1年前の応当日から開始の日の前日までに終了した判定対象者の年又は事業年度を合わせた期間、最後に③ 新規設立法人の事業年度開始の日の1年前の応当日から開始の日の前日までの期間で、事業年度開始の日の前日までに6月経過している場合はその6か月の期間まで判定対象となるため注意が必要です。ここまでやって全て5億円以下であれば、特定新規設立法人としての納税義務は免除となります。
ただし、上記②③の期間について、規定のカッコ書きに「その終了する日の翌日から当該新設開始日の前日までの期間が二月未満であるものを除く」とあります。つまり、親会社の決算から2ヶ月未満のうちに子会社を設立した場合、①の課税売上さえ5億円以下であれば、②はパスされ、③の年換算後の金額が5億円以下で判断します。今回のケースのように特定新規設立法人としての納税義務は免除となります。
※①、➁は12か月に年換算の必要がありますが、➂にはそのような規定がないことにも留意する必要があります。
記事がありません