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会計・税務2020.11.03

(税務相談)未払賞与の会計・税務の取扱い

(税務相談)未払賞与の会計・税務の取扱い

目次

A部長
A部長

今期は業績が好調のため、決算対策の一つとして賞与を支給したいと考えています。ただし、今からですと今期中の支払いは難しいため、翌年度の初月に当期費用(確定額)計上したものを支払う予定です。この場合の会計、税務上の取扱い、留意点等教えて頂けますでしょうか。

 

※内容は、執筆現在当時の法令等に基づいております。文中の税法の解釈等見解にわたる部分は、執筆者の私見ですので、実際の申告等税法の解釈適用に当たっては、ご本人の責任において各顧問税理士や税務当局にご確認頂き、行ってください。

会計上の取扱い

支給額が確定しているか」、「臨時的な要因による支給か」に応じて、会計上は3パターンの科目表示となります【リサーチ・センター審理情報[No.15]  未払従業員賞与の財務諸表における表示科目について】。

・「支給額が確定していない」場合

支給見込額のうち当期に帰属する額を「賞与引当金」として計上します。

(例)3月決算会社で、支給対象期間が1月~6月支払は7月のケースでは、1月~3月までの当期に帰属する額を「賞与引当金」として計上します。

・「支給額が確定していて、支給対象期間に対応して算定されている」場合

財務諸表の作成時において従業員への支給額が確定しており、当該支給額が支給対象期間に対応して算定されている場合には「未払費用」として計上します。

(例)3月決算会社で、支給対象期間が10月~3月支払は4月のケースでは、支給対象期間が当期に帰属しているため4月に支払う額を「未払費用」として計上します。

・「支給額が確定しているが、臨時の要因によって算定されている」場合

同じく財務諸表の作成時において従業員への支給額が確定しており、当該支給額が支給対象期間とは別の臨時的な要因に基づいて算定されている場合には「未払金」として計上します。

(例)成功報酬、決算賞与

【当てはめ】

今回のご質問は、支給対象期間とは別の利益が出たことによる臨時的な要因により、賞与の支給額が算定されているため「未払金として計上することとなります。

税務上の取扱い

税務上は、損金とするためには債務が確定していることが条件となります。そのため、支払ったことと同視できるケースに限り未払の状態であっても損金として算入することができます(法令72条の3)。

・その支給額を、各人別にかつ同時期に支給を受ける全ての使用人に対して通知をしていること。

・イの通知をした金額を当該通知をした全ての使用人に対し当該通知をした日の属する事業年度終了の日の翌日から1月以内に支払つていること。

・その支給額につきイの通知をした日の属する事業年度において損金経理をしていること。

【当てはめ】

損金経理しており、支払いも翌年度の初月のため、損金算入のための要件のうち2つを満たしています。最後に、各人別に、かつ、同時期に支給を受ける全ての使用人に対して通知した場合には、当期に損金算入することができます

【注意点】

もし仮に、翌年度の支給日までに在籍していない使用人に賞与を支払わなかった場合には、それは債務が確定しているとは言えないため、その従業員分の賞与のみならず、全額が損金不算入となります(法基通9-2-43)。

また、条文等で明記等されていませんが、給与規程等で賞与の支給日在籍条件を定めている場合には、結果的に誰も退職しなかったとしても期末日時点で債務が確定しているとは言えないとも考えられるため、規程の見直しも含めてよく検討する必要があります

なお、こちらは良く税務調査でも確認の対象となりますので、従業員への通知の方法は条文上、定められていはいませんが、期末日前までに確かに通知していたことのエビデンスとしてメール等を残しておくような対応が望ましいです。

 

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