BLOGブログ
(税務相談)居抜き物件の処理(会計・税務)

目次

来年に飲食店をOPEN予定ですが、この度、丁度いい立地で居抜きの物件をご紹介頂きました。多少の修繕を掛ければ直ぐに営業を開始できるため、当該物件にて決定しようと思いますが、この場合の会計・税務上の取扱いを教えてください。
※内容は、執筆現在当時の法令等に基づいております。文中の税法の解釈等見解にわたる部分は、執筆者の私見ですので、実際の申告等税法の解釈適用に当たっては、ご本人の責任において各顧問税理士や税務当局にご確認頂き、行ってください。
取引の整理
今回の取引対の相手方は、第三者ですので何らかの経済合理性がある取引と考え、それが会計・税務上でどのような処理となるかという順序で考えていきます。
今回のケースですと、それぞれ以下のようなメリットが存在します。
譲受側(当社):設備投資のイニシャルコストや、店舗営業までのリードタイムの節約が可能
譲渡側(相手方):原状回復費用の削減が可能
以上のことから、それぞれが経済的な理由をもって行われた取引と整理するこができます。
会計上の処理
居抜き物件に関する会計上の取り扱いは、基準等では明確に規定されていないことから、取引の経済的実態に即して考える必要があります。
今回の取引は、はじめに記載したように価値ある資産を譲り受けている一方、本来であれば相手方が負担すべきであった将来の原状回復費用を引き受けた取引と言えます。
従いまして、上記の資産・負債をそれぞれの時価で計上し、差額を資産や譲受益等で処理することが最も当該取引を表す会計処理になると考えます。
(仕訳例)建物付属設備***/資産除去債務***
<実務上のポイント>
資産・負債のそれぞれの時価を把握するためにも、相手方には譲受資産の種類や価額が分かる譲渡資産目録(できれば耐用年数を算定するために取得日等も記載しもらう)を、また工事業者等には原状回復費用に関する見積書を依頼しましょう。
税務上の処理(法人税)
税務上は、以下のように資産側と負債側で分けて考えます。
資産側:無償で資産を譲り受けたとして考えられますので、その取得価額は資産の時価となります(法法22条2項、法令54条第六号イ)。
負債側:あくまで会計上の処理は将来の原状回復費用であり、相手先は将来の工事業者であり、また金額も退去時の資産の使用状況や市況等により変動するため、現時点で未だ債務は確定していないと税務上は考えられ、受贈益として取り扱う必要があります(法法22条3項イ、法基通 2-2-12)。
税務上の処理(消費税)
今回のケースでは、税務上は債務が確定していない以上、「反対給付はない無償による資産の譲渡」として取り扱われるため課税関係は発生しません(消基通5-1-2)。
参考条文
法法第22条
内国法人の各事業年度の所得の金額は、当該事業年度の益金の額から当該事業年度の損金の額を控除した金額とする。
2 内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の益金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、資産の販売、有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供、無償による資産の譲受けその他の取引で資本等取引以外のものに係る当該事業年度の収益の額とする。
3 内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の損金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、次に掲げる額とする。
二 前号に掲げるもののほか、当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用(償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く。)の額
法令第54条 減価償却資産の取得価額
減価償却資産の第48条から第50条まで(減価償却資産の償却の方法)に規定する取得価額は、次の各号に掲げる資産の区分に応じ当該各号に定める金額とする。
六 前各号に規定する方法以外の方法により取得をした減価償却資産 次に掲げる金額の合計額
イ その取得の時における当該資産の取得のために通常要する価額
ロ 当該資産を事業の用に供するために直接要した費用の額
法基通 2-2-12 債務の確定の判定
法第22条第3項第2号《損金の額に算入される販売費等》の償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務が確定しているものとは、別に定めるものを除き、次に掲げる要件の全てに該当するものとする。
(1) 当該事業年度終了の日までに当該費用に係る債務が成立していること。
(2) 当該事業年度終了の日までに当該債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していること。
(3) 当該事業年度終了の日までにその金額を合理的に算定することができるものであること。
消基通5-1-2 対価を得て行われるの意義
法第2条第1項第8号《資産の譲渡等の意義》に規定する「対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供」とは、資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供に対して反対給付を受けることをいうから、無償による資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供は、資産の譲渡等に該当しないことに留意する。
※内容は、執筆現在当時の法令等に基づいております。文中の税法の解釈等見解にわたる部分は、執筆者の私見ですので、実際の申告等税法の解釈適用に当たっては、ご本人の責任において行ってください。