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(税務相談)地方税 役員報酬否認の場合の課税標準額

目次

弊社は、当期に役員に対して事前確定届出を提出していない役員賞与を支給しました。当該役員賞与は、法人税法上は損金不算入となるかと思いますが、地方税の取扱いを教えて頂けますでしょうか。
なお弊社は、資本金1億円超、かつ従業員が100人超在籍しております。
※内容は、執筆現在当時の法令等に基づいております。文中の税法の解釈等見解にわたる部分は、執筆者の私見ですので、実際の申告等税法の解釈適用に当たっては、ご本人の責任において各顧問税理士や税務当局にご確認頂き、行ってください。
検討すべき地方税の種類
御社の資本金は1億円超ということですので、事業税の外形標準適用会社となり、また従業員につきましては100人超在籍されおりますので、事業所税の納税義務もございます。これらの税目について、法人税法上否認とされた役員報酬の額がどのように取り扱われるか検討する必要があります。
報酬給与額の算定方法(事業税 外形標準)
事業税の報酬給与額の課税標準を規定する条文等では、「法人税の所得の計算上、損金の額に算入されるもので、当事業年度において支出されたものに限る」と記載されております(地方税法72条の15①、取扱通知4の1の2)。
今回のご質問の役員賞与は、法人税法上は損金の額にはされていません。
そのため、事業税の報酬給与額に含める必要はありません。
従業者割の算定方法(事業所税)
事業所税の従業者割の課税標準を規定する条文等では、「課税標準の算定期間中に支払われた従業者給与総額(所得税法上の給与と意義は同じとされています)とする(※支払いが確定した給与で、未払金として処理されたものも含む)。」(地方税法701条の40、取扱通知(市)第9章3(6)イ)と記載されております。
今回のご質問の役員賞与は、法人税法上、損金の額に算入されてはいませんが、所得税の計算上は課税されています。
そのため、事業所税の従業者割には含める必要があります。
関連条文
【報酬給与額 事業税】
地方税法第72条の15 報酬給与額の算定の方法
前条の各事業年度の報酬給与額は、次の各号に掲げる金額(当該事業年度の法人税の所得の計算上損金の額に算入されるもの又は当該事業年度終了の日の属する連結事業年度の法人税の連結所得(法人税法第2条第18号の4に規定する連結所得をいう。以下本節において同じ。)の計算上損金の額に算入されるもの(これらのうち政令で定めるものを除く。)及び当該事業年度において支出されるもので政令で定めるものに限る。)の合計額による。
一 法人が各事業年度においてその役員又は使用人に対する報酬、給料、賃金、賞与、退職手当その他これらの性質を有する給与として支出する金額の合計額
二 法人が各事業年度において確定給付企業年金法第3条第1項に規定する確定給付企業年金に係る規約に基づいて同法第2条第4項に規定する加入者のために支出する同法第55条第1項の掛金その他の法人が役員又は使用人のために支出する掛金(これに類するものを含む。)で政令で定めるものの金額の合計額
取扱通知(都道府県)4の1の2
各事業年度の報酬給与額、支払利子又は支払賃借料は、原則として、法人が支払う給与、利子又は賃借料のうち当該事業年度の法人税の所得又は連結所得の計算上損金の額に算入されるものに限るものであるが、棚卸資産、有価証券、固定資産又は繰延資産に係るものについては、当該事業年度において法人が支払う給与、利子又は賃借料(法人税の所得又は連結所得の計算上損金の額に算入されるべきものに限る。)を当該事業年度の報酬給与額、支払利子又は支払賃借料とするものであること。また、各事業年度の受取利子又は受取賃借料は、法人が支払いを受ける利子又は賃借料のうち当該事業年度の法人税の所得又は連結所得の計算上益金の額に算入されるものに限るものであること。
【事業所税 従業者割】
地方税法701条の40 事業所税の課税標準
事業所税の課税標準は、資産割にあつては、課税標準の算定期間の末日現在における事業所床面積(当該課税標準の算定期間の月数が12月に満たない場合には、当該事業所床面積を12で除して得た面積に当該課税標準の算定期間の月数を乗じて得た面積。次項において同じ。)とし、従業者割にあつては、課税標準の算定期間中に支払われた従業者給与総額とする。
取扱通知(市)第9章3(6)イ
イ 事業所税のうち従業者割の課税標準は、課税標準の算定期間中に支払われた従業者給与総額とされているものであるが、この従業者給与総額とは、事業所等に勤務すべき者に対して課税標準の算定期間中に支払われた又は支払われるべき俸給、給与、賃金及び賞与並びにこれらの性質を有する給与の総額とされているものであるが、次の諸点に留意すること。
(ア) 「これらの性質を有する給与」とは、扶養手当、住居手当、通勤手当、時間外勤務手当、現物給与等をいうものであり、退職給与金、年金、恩給等は含まれないものであること。
(イ) 外交員その他これらに類する者の業務に関する報酬等で所得税法第28条第1項に規定する給与等に該当しないものは含まれないものであること。
(ウ) 給与の支払を受けるべき者であっても、その勤務すべき施設が事業所等に該当しない場合の当該施設の従業者(例えば常時船舶の乗組員である者)に対して支払われる給与については含まれないものであること。