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法人税2020.10.31

(税務相談)フリーレントの税務 支払側

(税務相談)フリーレントの税務 支払側

目次

フリーレントの処理方法

フリーレントの処理方法としては、以下の2通りが存在します。

① 実際に賃料を支払した期間から費用を認識する処理

② 賃料総額をフリーレント期間を含む賃貸期間で按分し,賃貸期間にわたって費用計上する処理(いわゆるフリーレント処理

なお、収益側の処理としては、税務通信にて平成19年において独自に国税庁に取材し、“中途解約ができない”ことを条件にフリーレントを行っている契約の場合は,賃貸契約を締結した時点で賃貸期間に相当する賃料総額の支払いを受けるべき権利が確定しているといえるため,賃料総額をフリーレント期間を含めた賃貸期間で按分し,収益計上する処理が妥当であることを確認したとの記事があり、これに合わせて支払側も同様にフリーレント処理できるとの考えは実務家の中でも多いが、下記、比較的最近の裁決事例で、その処理が否定されているため注意が必要だ

※内容は、執筆現在当時の法令等に基づいております。文中の税法の解釈等見解にわたる部分は、執筆者の私見ですので、実際の申告等税法の解釈適用に当たっては、ご本人の責任において各顧問税理士や税務当局にご確認頂き、行ってください。

法人税上の取り扱い

税務上は、その債務が確定しているかにより、損金処理の可否が決まるが、その判断基準としては下記の通達に沿って個別具体的に判断する必要があります。

法基通2-2-12  債務の確定の判定

法第22条第3項第2号《損金の額に算入される販売費等》の償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務が確定しているものとは、別に定めるものを除き、次に掲げる要件の全てに該当するものとする。

(1) 当該事業年度終了の日までに当該費用に係る債務が成立していること。

(2) 当該事業年度終了の日までに当該債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していること。

(3) 当該事業年度終了の日までにその金額を合理的に算定することができるものであること。

フリーレント処理の場合で、例え中途解約の禁止条項が契約上存在していおり、途中で退去する際に金銭を支払ったとしても、それはあくまで違約金(損害賠償金)としての性質であり、これを支払賃料の一部とする処理する方法は、一種の見積りであり、債務が確定したとは言えないため損金としては認められないと考えられます。

消費税法上の取扱い

消費税法では実際に収受した金額が、課税標準となることから、フリーレント処理のように実際に支払いが行われていない場合には、仕入税額控除は認められないと考えられます。

裁決事例(平成30年6月15日裁決)

賃借した不動産の一部を転貸していた事例です。賃借、転貸どちらの契約も最初の6ヵ月間に一部賃料を減額するフリーレント期間を設定しておりましたが、税務上、フリーレント処理は認められませんでした。

※転貸側は中途解約禁止条項がなかったため、フリーレント処理を否定されています(今回省略)

以下会社の主張に対する審判所の判断の一部を抜粋してご紹介します。

請求人は、本件支払賃料計上額について、債務確定の判定の3つの要件(法人税基本通達2-2-12)を満たしており、本件賃借契約のように中途解約不能で、中途解約した場合に残りの賃貸借期間の賃料を支払うことになっている長期の賃料減額期間のある賃貸借契約の場合、契約時に契約期間全体にわたる賃料総額の支払をすべき義務が確定していると理解すべきであり、契約によって受けている便益は契約期間全体において何ら変わりないことを踏まえれば、当事者間の合理的な意思としては、単に支払時期を遅らせているにすぎず、経済実態として、本件当初6か月間の減額された賃料を単なる賃料の値引きと見るのではなく、本件当初6か月間経過後の月額賃料に含めて支払っていると解するのが妥当であることから、本件あん分計算方式により算出した額に基づく本件支払賃料計上額は、合理的に算定された額であり、契約の相手方である賃貸人の経理処理の選択状況にかかわらず、本件事業年度の損金の額に算入できる旨主張する。
 しかしながら、本件賃借契約の契約当事者間では、本件賃借物件に係る本件当初6か月間の賃料の減額という法律効果が本件賃借契約(法律行為)に基づき成立し、当該法律効果を変更又は消滅させる他の法律行為があるとする証拠も認められないことからすれば、当事者間の合理的な意思として、単に支払時期を遅らせているにすぎないなどの請求人が主張する事実は認められないのであるから、本件賃借物件に係る賃料として本件事業年度終了の日までに債務が確定した金額は、本件賃借契約の特約条項により減額された月額賃料に基づいて算出された本件支払賃料額である。そうすると、本件あん分計算方式によって平準化された月額賃料相当額に基づいて請求人が算出した金額(本件支払賃料計上額)は、一種の見積費用あり、本件支払賃料額を超える金額については、本件賃借物件に係る賃料として本件事業年度終了の日までに債務が確定した金額とは認められないことから、この点に関する請求人の主張には理由がない。

 

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