BLOGブログ
(税務相談)源泉所得税 入社祝い金

目次

弊社では入社して頂いた中途社員について入社祝い金(一律5万円)を支給する制度を創設予定ですが、この際に源泉徴収等は必要になりますでしょうか。
※内容は、執筆現在当時の法令等に基づいております。文中の税法の解釈等見解にわたる部分は、執筆者の私見ですので、実際の申告等税法の解釈適用に当たっては、ご本人の責任において各顧問税理士や税務当局にご確認頂き、行ってください。
総論
入社祝い金がどのような性質を有するものか(何に対しての支払いか)により、支払者側の所得の種類が決まり、それにより源泉徴収の率が決まります。
具体的には、入社祝い金が、「入社することを約束したことに対する支払い」なのか、「労務の提供に対する支払い」なのかにより、下記の所得に分類できます。
雑所得・・・「入社することを約束したことに対する支払い」
給与所得・・・「労務の提供に対する支払い」
※条文等ではこれら明記はないため、下記のように実態に基づいた理論的な検討により、所得の種類を決定する必要があります。
雑所得の検討
所得税法では、源泉徴収すべき報酬の一つとして、「契約金」を列挙項目として規定しております。この「契約金」とは、施行令で「当該一定の者のために役務を提供し、又はそれ以外の者のために役務を提供しないことを約することにより一時に受ける契約金」とされています。
契約金と聞くと、プロ野球選手のようなケースのみが対象と思われるかもしれませんが、所基通では「役務の提供の対価が給与等とされる者が当該役務の提供契約を締結するに際して支払を受ける契約金も含まれる」とされ、一般の従業員にも適用されることが明記されています。
また「契約金」の内容は、更に所基通で「一定の者のために役務を提供し・・・ことを約することにより一時に支払を受ける契約金、支度金、移転料等の全てのものが含まれる」とされています。
以上から、支給する入社祝金が「入社すること(したこと)」に対して支払う内容の場合には、名目を問わず雑所得として支払額の10.21%を源泉徴収し、国に納付するとになると思われます(従業員は、確定申告が必要となります)。
給与所得の検討
上記でみたように、「入社すること(したこと)」に対して支払うも場合には、例え、雇用契約が前提として支払われる場合にも、理論的には給与所得とはなりません。
ただし、その支払いが例えば、入社して一定期間等を経ないと支給されない場合や、一定期間を経ないで退職した場合に返還義務がある等のような場合には、通常は「労務に対する支払」といえるため、給与所得として所得の額に応じた源泉税率で国に納付が必要となります。
参考条文
所法第204条 源泉徴収義務
居住者に対し国内において次に掲げる報酬若しくは料金、契約金又は賞金の支払をする者は、その支払の際、その報酬若しくは料金、契約金又は賞金について所得税を徴収し、その徴収の日の属する月の翌月10日までに、これを国に納付しなければならない。
七 役務の提供を約することにより一時に取得する契約金で政令で定めるもの
所法令第320条 報酬、料金、契約金又は賞金に係る源泉徴収
6 法第204条第1項第7号に規定する政令で定める契約金は、職業野球の選手その他一定の者に専属して役務の提供をする者で、当該一定の者のために役務を提供し、又はそれ以外の者のために役務を提供しないことを約することにより一時に受ける契約金とする。
所基通204-29 役務の提供の対価が給与等とされる者の受ける契約金
法第204条第1項第7号に掲げる契約金には、役務の提供の対価が給与等とされる者が当該役務の提供契約を締結するに際して支払を受ける契約金も含まれる。
(注) 上記の契約金は、雑所得(35-1の(9)参照)となり、法第2条第1項第24号《定義》に規定する臨時所得に該当する場合があることに留意する。
所基通204-30 契約金の範囲
法第204条第1項第7号に掲げる契約金には、一定の者のために役務を提供し又はそれ以外の者のために役務を提供しないことを約することにより一時に支払を受ける契約金、支度金、移転料等の全てのものが含まれる。ただし、その役務の提供の対価が給与等とされる者の就職に伴う転居のための費用で、他の契約金と明確に区分して支払われ、かつ、法第9条第1項第4号に掲げる金品に該当すると認められるものについては、この限りではない。