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【まとめ】源泉徴収漏れのペナルティと事後の対処方法

目次
法定調書の作成時期がもうそろそろ近づいて参りましたが、本日は個人事業主の方への支払いの際に源泉徴収漏れが発覚した場合のペナルティとその後のすべき対応方法を紹介していきます。
源泉徴収漏れが発生しやすいケース
源泉徴収漏れが起きやすいケースとしては以下のようなケースが主に考えられます。
・そもそも源泉徴収の対象報酬という認識がなかった
・請求書に源泉税の記載がなかったため、そのまま支払ってしまった
・屋号を会社名と誤認し、個人ではなく法人に対する支払いと認識していた etc…
※内容は、執筆現在当時の法令等に基づいております。文中の税法の解釈等見解にわたる部分は、執筆者の私見ですので、実際の申告等税法の解釈適用に当たっては、ご本人の責任において各顧問税理士や税務当局にご確認頂き、行ってください。
源泉徴収義務
たまにある間違いとして、支払いを受ける者が適切に確定申告をして所得税を納付すれば国に入るトータルの税金は変わらないため、問題ないという勘違いありますが、そうではありません。
源泉税を徴収して、納付する義務は法人にあります。仮に納付が漏れた場合にも「所得税を徴収して納付すべき者がその所得税を納付しなかつたときは、税務署長は、その所得税をその者から徴収する」と規定されており(所法221条)、受領者(個人事業主)ではなく、あくまで支払者(法人)に納付義務があります。
罰則・ペナルティ
それでは、源泉税を納付をしていなかった場合のペナルティを見ていきましょう。ペナルティには不納付加算税と延滞税の2つの種類があります。
・不納付加算税、
文字通り納付をしなかったことによるペナルティです。
【納付税額】
納付税額に10%(自主的に納付した場合には5%)を乗じた金額を支払う必要があります。
※不納付加算税の場合には、延滞税のように日割りの概念がありません(ので影響額が延滞税より大きくなります)。
【例外】
ただし以下の場合には納付が不要とされています。
・納付期限が1か月以内かつ、過去1年以内に納付漏れがない場合
・加算税額が5,000円未満の場合
・延滞税
文字通り延滞したことによるペナルティです。
【納付税額】
延滞日数に応じて、その未納の税額に一定の年率を乗じた金額を支払う必要があります(1か月未満の場合には、特例基準割合(令和2年:2.6%)、2か月目以降:年14.6パーセントの割合)。
※本税のみに対して発生します(加算税に対しては発生しません)。
【例外】
・延滞税額が1,000円未満の場合
事後の対処方法
最も望ましい対処方法は、本来徴収すべきであった源泉税額を受領者から返還を受けることですが、様々な理由(ex,相手先から源泉税の返還を受けられない、言いづらいetc)により、返還を受けられないケースがあります。
その場合には、いわゆるグロスアップ処理(控除又は請求をしないこととした時においてその納付した税額に相当する金額を税引き手取額により支払ったものとし、その支払ったものとされる金額に対する税額を計算する)が認められています。
条文そのままの文言ですと、理解がしづらいため数字を当てはめて見てみましょう。
(例)100,000円の原稿料で10%(復興税は考慮しない)に相当する10,000円を控除した90,000円を本来は支払うべきであったケース
⇒本来納付する税額(10,000円)を税引き手取額により支払ったもの(10,0000円÷0.9=11,111円)として、その支払ったものとされる金額に対する税額を計算します(11,111円✖10%=1,111円)。
参考条文
所法第221条 源泉徴収に係る所得税の徴収
第1章から前章まで(源泉徴収)の規定により所得税を徴収して納付すべき者がその所得税を納付しなかつたときは、税務署長は、その所得税をその者から徴収する。
所基通221-1 支払者が税額を負担する場合の税額計算
法第221条の規定により同条に規定する者から源泉徴収に係る所得税を徴収する場合において、その者がその徴収すべき税額を徴収していなかったときは、同条の規定により徴収すべき税額は、次により計算することとなることに留意する。
(1) 当該税額を徴収していなかった理由が、当該徴収すべき税額を支払者が負担する契約となっていたことによるものである場合には、税引手取額により支払金額が定められていたものとして、181~223共-4により計算する。
(2) 当該税額を徴収していなかった理由が、(1)の理由以外のものである場合には、既に支払った金額のうちから当該税額を徴収すべきであったものとし、既に支払った金額を基準として計算する。この場合において、その計算した税額を納付した支払者が、その納付した税額につき法第222条《不徴収税額の支払金額からの控除及び支払請求等》に規定する控除又は請求をしないこととしたときは、当該控除又は請求をしないこととした時においてその納付した税額に相当する金額を税引き手取額により支払ったものとし、その支払ったものとされる金額に対する税額を181~223共-4により計算する。
国則法第67条 不納付加算税
源泉徴収による国税がその法定納期限までに完納されなかつた場合には、税務署長は、当該納税者から、第36条第1項第2号(源泉徴収による国税の納税の告知)の規定による納税の告知に係る税額又はその法定納期限後に当該告知を受けることなく納付された税額に100分の10の割合を乗じて計算した金額に相当する不納付加算税を徴収する。ただし、当該告知又は納付に係る国税を法定納期限までに納付しなかつたことについて正当な理由があると認められる場合は、この限りでない。
2 源泉徴収による国税が第36条第1項第2号の規定による納税の告知を受けることなくその法定納期限後に納付された場合において、その納付が、当該国税についての調査があつたことにより当該国税について当該告知があるべきことを予知してされたものでないときは、その納付された税額に係る前項の不納付加算税の額は、同項の規定にかかわらず、当該納付された税額に100分の5の割合を乗じて計算した金額とする。
3 第1項の規定は、前項の規定に該当する納付がされた場合において、その納付が法定納期限までに納付する意思があつたと認められる場合として政令で定める場合に該当してされたものであり、かつ、当該納付に係る源泉徴収による国税が法定納期限から1月を経過する日までに納付されたものであるときは、適用しない。
国則令第27条の2 期限内申告書を提出する意思等があつたと認められる場合
2 法第67条第3項(不納付加算税)に規定する法定納期限までに納付する意思があつたと認められる場合として政令で定める場合は、同項に規定する納付に係る法定納期限の属する月の前月の末日から起算して1年前の日までの間に法定納期限が到来する源泉徴収等による国税について、次の各号のいずれにも該当する場合とする。
一 法第36条第1項(第2号に係る部分に限る。)(納税の告知)の規定による納税の告知(法第67条第1項ただし書に該当する場合における納税の告知を除く。)を受けたことがない場合
国則法第119条 国税の確定金額の端数計算等
4 附帯税の確定金額に100円未満の端数があるとき、又はその全額が1,000円未満(加算税に係るものについては、5,000円未満)であるときは、その端数金額又はその全額を切り捨てる。