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印紙税の節約術まとめ(そもそも編)

【はじめに】
年間を通すと大きな負担となってくる印紙税。契約書の内容や記載金額、作成する媒体や場所等を工夫することで節約に繋がるかもしれません。そんな印紙税の節約術を複数これからご紹介していきたいと思います。今回はその中から、収入印紙で貼り忘れが発生しやすいケースをご紹介し、そもそもですが、まず余計なペナルティを払わないために気を付けたいポイントを本日はご紹介します。
※内容は、執筆現在当時の法令等に基づいております。文中の税法の解釈等見解にわたる部分は、執筆者の私見ですので、実際の申告等税法の解釈適用に当たっては、ご本人の責任において各顧問税理士や税務当局にご確認頂き、行ってください。
収入印紙を貼り忘れない(課税文書の判断)
(1)課税文書の判断と過怠税
印紙税の課税対象は印紙税法で定められた20種類の「課税文書」に限られており、この課税文書を作成した時に作成者に対して納税義務が発生します。
また、課税文書に該当するにも拘わらず、貼るべき収入印紙を貼っていない場合や納めるべき税額が不足していた場合、事情を問わず、納付しなかった印紙税額の3倍(自主的に申し出たときは1.1倍)、消印忘れの場合は1倍の過怠税が課税されます。この過怠税は法人税法上の損金や所得税法上の必要経費にも算入されないため、場合によってはかなり痛い出費になってしまいます。
ですので、文書を作成したタイミングで課税文書か否かの判断を行い、収入印紙の添付・消印を必ず忘れずに行うことがまずは一番重要となります。
課税文書か否かの判断について、まず、課税文書とは、次の3つ要件のすべてに当てはまる文書をいいます。それぞれ、その文書に記載されている内容に基づいて判断することとなりますが、当事者の約束や慣習により文書の名称や文言は種々の意味に用いられています。そのため、その名称、呼称や記載されている文言により形式的に行うのではなく、その文書に記載されている文言、符号等の実質的な意味を汲み取って行う必要がありますので、この内容判断が難しい場合は、顧問の税理士や司法書士、税務署等に必ず事前相談することをお勧めします。
①印紙税法別表第一(課税物件表)※に掲げられている20種類の文書により証されるべき事項(課税事項)が記載されていること。
②当事者の間において課税事項を証明する目的で作成された文書であること。
③印紙税法第5条(非課税文書)の規定により印紙税を課税しないこととされている以下の非課税文書でないこと。
・契約金額が少額なものなど(課税物件表の非課税物件欄)
・国、地方公共団体又はその他の非課税法人(印紙税法別表第二)が作成するもの
・日銀や独立行政法人など特定の者の作成する特定の文書(印紙税法別表第三)
・国民健康保険法や厚生年金法などの特別の法律により非課税とされる文書
※印紙税法別表第一(課税物件表)(国税庁HP)https://www.nta.go.jp/publication/pamph/inshi/tebiki/pdf/08.pdf
(2)判断を誤りやすい文書例
①申込書、注文書、依頼書
申込書等は、一般的に契約の申込みの事実を証明する目的で作成されるものであるため、印紙税法上の契約書には該当しません。ただし、申込みにより自動的に契約が成立こととなっている場合など、内容が実質的に契約の成立を証する文書の場合は、課税文書となる可能性があります。
②覚書、念書、差入書
念書や覚書のように、契約の成立や変更などを証明するために作成される文書は、印紙税法上の契約書に含まれるため、課税文書となる可能性があります。
③レシート、仮領収書、受取書、預り書、請求書、納品書、仕切書
「領収書」という名称でなくとも金銭等の引渡しについて、受領事実を証明するために作成し、その支払者に交付する証拠証書は課税文書「金銭または有価証券の寄託に関する契約書(17号文書)」に該当します。受取事実を証明するために請求書や納品書などに「代済」、「相済」や「了」などと記入したものや、お買上票などでその作成の目的が金銭又は有価証券の受取事実を証明するものに該当します。
④債務承認及び弁済契約書
金銭消費貸借契約などに基づく既存の債務金額を承認し、併せてその返還期限、返還方法などを約することを内容とする契約書は、「消費貸借に関する契約書(1号文書)」に該当します。なお、その契約書に債務金額を確定させた原契約書が他に存在することを明らかにしているときは、その債務承認金額は記載金額とはなりません。
⑤貨物の保管及び荷役の契約書
物品の販売会社と運送会社との間において、物品の販売会社の所有する物品の保管及び荷役についての契約書に、保管料及び荷役料の支払方法を記載した場合には、保管についての事項は物品の寄託契約として課税事項となりませんが、荷役についての事項は請負契約となり、契約金額の記載のあるものは「請負に関する契約書(2号文書)」に、契約金額の記載のないものは「継続的取引の基本となる契約書(7号文書)」に該当します。
⑥建物の賃貸借契約書、使用貸借契約書
建物の賃貸借契約書は印紙税の課税対象となりませんが、その敷地についての賃貸借契約を結んだことが明らかな内容が含まれる場合は「土地の賃借権の設定に関する契約書(1号文書)」に該当します。
⑦保守契約書、業務委託契約書
例えば、ソフトウェア保守契約の場合、単に操作サポート、電話対応等のみの契約内容の場合は「委任」として不課税、システム不具合の修正・保守作業等が含まれる場合は「請負」として「請負に関する契約書(2号文書)」に該当します。また、営業者間において継続する複数取引の基本的な条件の定めがあるものは「継続的取引の基本となる契約書(7号文書)」に該当する可能性があります。なお、仕事の成果物に対して報酬が発生するものが「請負」で、成果物に関係なく仕事の遂行に対して報酬が支払われるものが「委任」となります。