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法人税2020.12.01

D&O保険料の税務上の取扱いについて 

D&O保険料の税務上の取扱いについて 

目次

D&O保険料とは?

会社役員賠償責任保険(D&O保険)とは、株主代表訴訟で役員が敗訴して損害賠償責任を負担する場合、一定の範囲で補填する内容の会社と保険会社との契約をいいます。

D&O保険料を会社が負担することの主なメリット・デメリットは以下の通りです。

<メリット>

・優秀な人材の獲得や、訴訟リスクを過度に恐れて業務執行が保守的になり過ぎることを防ぐことが期待される。

<デメリット>

・会社に損害を与えた役員の損害賠償責任に関する保険料を会社が負担することは、利益相反取引となる可能性がある。

※内容は、執筆現在当時の法令等に基づいております。文中の税法の解釈等見解にわたる部分は、執筆者の私見ですので、実際の申告等税法の解釈適用に当たっては、ご本人の責任において各顧問税理士や税務当局にご確認頂き、行ってください。

D&O保険料の従前の取扱い(平成27年7月以前)

会社法上において利益相反の問題があったことから、従前はD&O保険料は、役員個人負担又は役員報酬から天引きとすることとされていました

これを会社負担とした場合には、役員に対して経済的利益の供与があったものとして給与課税が必要でした。

※取締役に落ち度がない場合や、勝訴した場合の訴訟手続費用等の保険料を会社が負担した場合は給与課税は不要(経済的な利益供与とはならない)。

平成27年7月 経産省解釈指針による変更

経済産業省から会社が利益相反の問題を解消するための次の手続を行えば会社が株主代表訴訟敗訴時担保部分に係る保険料を会社法上適法に負担することができるとの解釈が示されました。

1 取締役会の承認

2 社外取締役が過半数の構成員である任意の委員会の同意又は社外取締役全員の同意の取得

税務上も、当該プロセスによって会社法上適法に負担した場合には、役員に対する経済的利益の供与はないと考えられることから、役員個人に対する給与課税を行う必要はないという取扱いとしました

令和元年改正会社法による影響

令和元年 12 月に成立した改正会社法において、新たに会社役員賠償責任保険に係る契約に関する規定が設けられ、当該契約を締結するための手続等が会社法上明確化されました。

そして、経産省は国税庁に対して以下のように、改めて改正会社法施行後も従前の解釈指針の取扱いと同様に、会社がD&O保険料を負担した場合にも給与課税を行う必要はない旨の回答を得ています。

会社が、改正会社法の規定に基づき、当該保険料を負担した場合には、当該負担は会社法上適法な負担と考えられることから、役員個人に対する経済的利益の供与はなく、役員個人に対する給与課税を行う必要はない

参考条文

【改正会社法第430条の3】

株式会社が、保険者との間で締結する保険契約のうち役員等がその職務の執行に関し責任を負うこと又は当該責任の追及に係る請求を受けることによって生ずることのある損害を保険者が塡補することを約するものであって、役員等を被保険者とするもの(当該保険契約を締結することにより被保険者である役員等の職務の執行の適正性が著しく損なわれるおそれがないものとして法務省令で定めるものを除く。第三項ただし書きにおいて「役員等賠償責任保険契約」という。)の内容の決定をするには、株主総会(取締役会設置会社にあっては、取締役会)の決議によらなければならない。

 

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