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使用人兼務役員の留意点

目次
昨日に引き続き、本日は、使用人兼務役員の留意点についてご紹介したいと思います。使用人兼務役員の規定は、複数あり、また複雑ですので、今回はその中から特に留意すべきポイントに絞ってご紹介していきます。
※内容は、執筆現在当時の法令等に基づいております。文中の税法の解釈等見解にわたる部分は、執筆者の私見ですので、実際の申告等税法の解釈適用に当たっては、ご本人の責任において各顧問税理士や税務当局にご確認頂き、行ってください。
原則的な取扱い
まずは以下の実態基準と、形式基準を満たしているかを確認する必要があります。注意点としては、職位を与えるだけではなく、実際に使用人として職務の従事が要件となります。
【実態基準】
実際に使用人としての職務に従事していることが要件となります(法法34条6項)。
【形式基準】
社長、副社長、副社長、専務、常務その他これらに準ずる職制上の地位を有する役員は使用人兼務役員とは認められません。また、当該使用人兼務役員が5/100超の株式保有割合を有している場合にも同じく使用人兼務役員とは認められません。
CFOやCTOのような役員の取扱い(法基通9-2-4、9-2-5)
法基通9-2-4では、法令71条で規定される「副社長、専務、常務その他これらに準ずる職制上の地位を有する役員」とは「定款等の規定又は総会若しくは取締役会の決議等によりその職制上の地位が付与された役員をいう」と規定されています。
通常は、定款や取締役会でCFOやCTOといった職位は付与されるもののため、法基通9-2-4に沿って検討しますと、使用人兼務役員には該当しないと考えられます。
また法基通9-2-5においても「職制上の地位でなく、法人の特定の部門の職務を統括しているものは、使用人兼務役員には該当しない」とされています。
CFOやCTOといった職位の者は、通常は職制上の地位でなく、特定の部門の職務を統括している性質が強いと考えれるため、法基通9-2-5に沿って検討した場合にも、使用人兼務役員には該当しないと考えられます。
役員給与限度額の留意点
法令第70条では、過大役員給与に該当しないように、「使用人としての職務に対するものを含めないで当該限度額等を定めている」と規定されています。
この定めているとは、法基通9-2-22 において「定款又は株主総会等において、役員給与の限度額等に使用人兼務役員の使用人分の給与を含めない旨を定め又は決議している」ことと規定されております。
つまり、役員報酬の限度額を定める際に、使用人部分の給与について取扱いを明記していない場合には、使用人部分も含めた役員に支払う全額が限度額を下回る必要があります(限度を超えて支給した場合には、役員報酬否認となります)。
適正な使用人給与額
損金に算入されるには、使用人給与として相当と認められる必要があります。仮に不相当(高過ぎる!)の場合には、その過大給与部分については役員給与否認となります。
それでは、何をもって相当と言うかについては、法基通9-2-23において規定されています。
比準すべき使用人として適当とする者がいる場合
⇒その者の給与額
比準すべき使用人として適当とする者がいない場合
⇒以下の3つの考え方で実務上は使用人部分の給与を決定します。
・役員となる直前に受けていた給与の額(増加額=役員部分という考え方です)
・その後のベースアップ等の状況を鑑みた給与の額(増加分は、役員部分と若干の使用人部分のベースアップという考え方です)
・使用人のうち最上位にある者に対して支給した給与の額(一般的に役員は従業員よりも給与は高いため、最も高い使用人給与をベースとする考え方です)
参考条文
法法第34条 役員給与の損金不算入
6 第1項に規定する使用人としての職務を有する役員とは、役員(社長、理事長その他政令で定めるものを除く。)のうち、部長、課長その他法人の使用人としての職制上の地位を有し、かつ、常時使用人としての職務に従事するものをいう。
法令第70条 過大な役員給与の額(抜粋)
ロ (法第34条第6項に規定する使用人としての職務を有する役員(第3号において「使用人兼務役員」という。)に対して支給する給与のうちその使用人としての職務に対するものを含めないで当該限度額等を定めている内国法人については、当該事業年度において当該職務に対する給与として支給した金額(同号に掲げる金額に相当する金額を除く。)のうち、その内国法人の他の使用人に対する給与の支給の状況等に照らし、当該職務に対する給与として相当であると認められる金額を除く。)
法令第71条 使用人兼務役員とされない役員
法第34条第6項(役員給与の損金不算入)に規定する政令で定める役員は、次に掲げる役員とする。
一 代表取締役、代表執行役、代表理事及び清算人
二 副社長、専務、常務その他これらに準ずる職制上の地位を有する役員
三 合名会社、合資会社及び合同会社の業務を執行する社員
四 取締役(指名委員会等設置会社の取締役及び監査等委員である取締役に限る。)、会計参与及び監査役並びに監事
五 前各号に掲げるもののほか、同族会社の役員のうち次に掲げる要件の全てを満たしている者(持株割合省略)
法基通9-2-4 職制上の地位を有する役員の意義
令第71条第1項第2号《使用人兼務役員とされない役員》に掲げる「副社長、専務、常務その他これらに準ずる職制上の地位を有する役員」とは、定款等の規定又は総会若しくは取締役会の決議等によりその職制上の地位が付与された役員をいう。
法基通9-2-5 使用人としての職制上の地位
法第34条第6項《使用人兼務役員》に規定する「その他法人の使用人としての職制上の地位」とは、支店長、工場長、営業所長、支配人、主任等法人の機構上定められている使用人たる職務上の地位をいう。したがって、取締役等で総務担当、経理担当というように使用人としての職制上の地位でなく、法人の特定の部門の職務を統括しているものは、使用人兼務役員には該当しない。
法基通9-2-22 使用人としての職務に対するものを含めないで役員給与の支給限度額等を定めている法人
令第70条第1号ロ《限度額等を超える役員給与の額》に規定する「使用人としての職務に対するものを含めないで当該限度額等を定めている法人」とは、定款又は株主総会、社員総会若しくはこれらに準ずるものにおいて役員給与の限度額等に使用人兼務役員の使用人分の給与を含めない旨を定め又は決議している法人をいう。
法基通9-2-23 使用人分の給与の適正額
使用人兼務役員に対する使用人分の給与を令第70条第1号ロ《限度額等を超える役員給与の額》に定める役員給与の限度額等に含めていない法人が、使用人兼務役員に対して使用人分の給与を支給した場合には、その使用人分の給与の額のうち当該使用人兼務役員が現に従事している使用人の職務とおおむね類似する職務に従事する使用人に対して支給した給与の額(その給与の額が特別の事情により他の使用人に比して著しく多額なものである場合には、その特別の事情がないものと仮定したときにおいて通常支給される額)に相当する金額は、原則として、これを使用人分の給与として相当な金額とする。この場合において、当該使用人兼務役員が現に従事している使用人の職務の内容等からみて比準すべき使用人として適当とする者がいないときは、当該使用人兼務役員が役員となる直前に受けていた給与の額、その後のベースアップ等の状況、使用人のうち最上位にある者に対して支給した給与の額等を参酌して適正に見積った金額によることができる。