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法人税2020.11.29

(税務相談)使用人兼務役員のメリット・デメリット

(税務相談)使用人兼務役員のメリット・デメリット
A部長
A部長

取締役には、使用人兼務役員というものもあると思いますが、一般的にどのような場合に、使用人兼務役員というものを利用するのでしょうか?

税務上のメリット・デメリットを合わせて教えて頂けますでしょうか。

使用人兼務役員とは?役員との違いは?

使用人兼務役員とは、その名のとおり「使用人」という地位と、「役員」という地位を有する者をいいます。

具体的には、法人税法34条6項で以下のように定義されています。

<使用人兼務役員の定義>

役員(社長、理事長その他政令で定めるものを除く。)のうち、部長、課長その他法人の使用人としての職制上の地位を有し、かつ、常時使用人としての職務に従事するものをいう

使用人兼務役員のメリット

・経営への参加

取締役としての地位を与え経営に参加させることにより、会社の中長期的な成長に積極的に関与してもらうことが期待できます。

・定期同額の不適用

役員報酬は”定期同額”であることが損金算入の要件ですが、使用人兼務役員の場合は、使用人部分の給与については月によって変動があった場合においても損金算入の制限はありません。※使用人分として適正額である必要あり。

・賞与

役員賞与の場合、事前確定届出が損金算入の要件ですが、使用人兼務役員の場合は、使用人部分の賞与については、他の従業員と支給時期、算定方法が同一であれば損金算入の制限はありません。※使用人分として適正額である必要あり。

・労働保険、その他労働基準法に定める権利(新任役員にとってメリット)

役員でありながら労働保険への加入ができる可能性があります。また従業員としての地位も有するため労働基準法に定める権利が保護されます。

使用人兼務役員のデメリット

・労働保険、その他労働基準法に定める権利(会社にとってメリット)

上記メリットの相反で会社にとっては、労働保険費用の負担、労働基準法の保護が求められます。

総論

以上見てきたように、今後の会社の成長のために従業員としての地位からだけではなく役員として経営に参加してもらいたいような場合に、一般的には「使用人兼務役員」が制度として導入されることが多いと多いと思います。

また従業員にとっても使用人であった時と同様に賞与を受けることや、毎月のインセンティブ等の使用人部分を従前どおり受給することができます。また、従業員としての地位も労働基準法等で保護されているため受け入れらえやすい制度と言えます。

次回は、使用人兼務役員制度の導入に際して、税務上留意しないとならないポイントを複数紹介したいと思います。

参考条文

法法第34条  役員給与の損金不算入

6 第1項に規定する使用人としての職務を有する役員とは、役員(社長、理事長その他政令で定めるものを除く。)のうち、部長、課長その他法人の使用人としての職制上の地位を有し、かつ、常時使用人としての職務に従事するものをいう。

法令第70条  過大な役員給与の額(抜粋)

ロ (法第34条第6項に規定する使用人としての職務を有する役員(第3号において「使用人兼務役員」という。)に対して支給する給与のうちその使用人としての職務に対するものを含めないで当該限度額等を定めている内国法人については、当該事業年度において当該職務に対する給与として支給した金額(同号に掲げる金額に相当する金額を除く。)のうち、その内国法人の他の使用人に対する給与の支給の状況等に照らし、当該職務に対する給与として相当であると認められる金額を除く。)

法令第71条  使用人兼務役員とされない役員

法第34条第6項(役員給与の損金不算入)に規定する政令で定める役員は、次に掲げる役員とする。

一 代表取締役、代表執行役、代表理事及び清算人

二 副社長、専務、常務その他これらに準ずる職制上の地位を有する役員

三 合名会社、合資会社及び合同会社の業務を執行する社員

四 取締役(指名委員会等設置会社の取締役及び監査等委員である取締役に限る。)、会計参与及び監査役並びに監事

五 前各号に掲げるもののほか、同族会社の役員のうち次に掲げる要件の全てを満たしている者(持株割合省略)

※内容は、執筆現在当時の法令等に基づいております。文中の税法の解釈等見解にわたる部分は、執筆者の私見ですので、実際の申告等税法の解釈適用に当たっては、ご本人の責任において行ってください。

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