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(税務相談)役員報酬 臨時改定事由について

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3月決算である弊社(以下、乙社)は親会社(以下、甲社)に株式を100%保有されており、弊社代表取締役Aは甲社の代表取締役も兼任しておりましたが、この度、9月末日をもってAは甲社の代表取締役からは退任し、弊社の代表取締役として専任する体制に移行予定です。
そこで従前は、甲社を頂点とするグループ経営体制を採用しているため、役員報酬は弊社からではなく、甲社のみから支給されていましたが、今後は弊社から支給する予定です。
この場合、新たに弊社から支給する役員給与は法人税法上、損金と取り扱えますでしょうか。なお、当該役員報酬に相当する金額分のグループ管理費用が今後減少する予定です。
※内容は、執筆現在当時の法令等に基づいております。文中の税法の解釈等見解にわたる部分は、執筆者の私見ですので、実際の申告等税法の解釈適用に当たっては、ご本人の責任において各顧問税理士や税務当局にご確認頂き、行ってください。
論点
事業年度開始の日の属する会計期間開始の日から三月を経過した日に行う今回の役員報酬の改定が、法人税法施行令第六十九条一項一号ロに規定する臨時改訂事由に該当するか。
検討
乙社においては従前から代表取締役であり、職制上の地位の変更はないが、法令第六十九条①一号ロに規定する臨時改定事由のうち、”その他これらに類するやむを得ない事情”として取り扱うことはできるか。
「役員給与に関するQ&A(平成24年4月改訂)」〔Q5〕抜粋
この臨時改訂事由による改定は、事業年度開始の日から3ヶ月までにされた定期給与の額の改定時には予測しがたい偶発的な事情等による定期給与の額の改定で、利益調整等の恣意性があるとはいえないものについても、定期同額給与とされる定期給与の額の改定として取り扱うこととしているものです。
どのような事情が生じた場合が臨時改訂事由に当たるかは、役員の職務内容など個々の実態に即し、予め定められていた役員給与の額を改定せざるを得ないやむを得ない事情があるかどうかにより判断することなりますが、・・・
あてはめ・結論
A氏が甲社代表取締役からの退任によって甲社からの役員給与の支給がなくなるため、乙社が直接支給するこの改定はやむを得ない事情と考えられます。
また同時に乙社についてもグループ管理費用の負担が軽減されるため、A氏の役員給与を直接支給する改定を行ったとしても、従前と同様の費用負担状況になると考えられ、利益調整等の恣意性もないものと思われます。
従って、法令第六十九条①一号ロに規定する”臨時改定事由に該当し、定期同額給与とされる定期給与の額の改定として取り扱うことができるものと考えられます。
参考条文(臨時改定事由)
第69条 定期同額給与の範囲等
一 法第34条第1項第1号に規定する定期給与(以下第6項までにおいて「定期給与」という。)で、次に掲げる改定(以下この号において「給与改定」という。)がされた場合における当該事業年度開始の日又は給与改定前の最後の支給時期の翌日から給与改定後の最初の支給時期の前日又は当該事業年度終了の日までの間の各支給時期における支給額が同額であるもの
ロ 当該事業年度において当該内国法人の役員の職制上の地位の変更、その役員の職務の内容の重大な変更その他これらに類するやむを得ない事情(第4項第2号及び第5項第1号において「臨時改定事由」という。)によりされたこれらの役員に係る定期給与の額の改定(イに掲げる改定を除く。)