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【簡単】医療費控除のまとめ・注意ポイント

目次
はじめに
新年を迎え、2020年分(令和2年分)確定申告の準備を始める時期となりました。昨年は新型コロナウイルスの影響で、「医療に関する支出」が例年より増えた方もいるかと思います。そんな「医療に関する支出」は、「医療費控除」として一定額超あれば確定申告することで所得税を減額(還付)できるので、これまで確定申告に関係がなかった方も要注目ポイントです。ですので、今回は所得控除の一つである「医療費控除」について解説していきます。
※内容は、執筆現在当時の法令等に基づいております。文中の税法の解釈等見解にわたる部分は、執筆者の私見ですので、実際の申告等税法の解釈適用に当たっては、ご本人の責任において各顧問税理士や税務当局にご確認頂き、行ってください。
医療費控除には2種類ある
医療費控除とは、ご家族の分も含めて、1年間に支払った対象となる「医療に関する支出」が一定額を超えるとき、確定申告によりその超過した金額を所得金額から控除することで、所得税と住民税を節税できる制度です。納税者やその家族が重い病気になどにかかり、多額の治療費を払わなければならなくなった年の税負担を軽減するという意図で制定されています。
この医療費控除には、通常の「医療費控除」と特例の「セルフメディケーション税制」の2種類があり、どちらかの選択適用となります。(ここでは便宜的に通常のものを単に医療費控除と呼びます。)
簡単に説明すると、医療費控除は、傷病・出産等に係る診察代、医薬品代、通院するための交通費など、治療や診察のために要した支出額の原則10万円を超える部分を所得金額から控除できます。
一方、セルフメディケーション税制は、治療や予防のために購入した指定医薬品の購入額の1万2千円を超える部分を所得金額から控除できます。
制度比較と控除額計算のポイント
それぞれの制度の概要をまとめると以下の通りです(対象となる医療費や医薬品の範囲は後述)。
どちらの制度も生計一の親族(財布が同じ)の医療費も含めて計算可能で、1年間に実際に支払った金額が対象となるのでご注意ください。例えば、年内は治療中でその支払いが翌年になってしまった場合は翌年の医療費になります。
また、適用要件について、セルフメディケーション税制は、指定医薬品の購入以外にも「一定の取組」(詳細は後述)が必要となります。
控除額の計算は、どちらも対象となる医療費から下図の「医療費から除かれる額①」、「医療費から除かれる額②」を差し引いた金額が控除額となるので、控除額が多い方を選択することが見極めのポイントです。

「医療費から除かれる額①」の「保険金などで補填される金額」は、医療費を補填する目的の保険金です。
出産手当金など医療費を補填する目的ではないものは医療費から差し引かないよう注意してください。医療費から差し引くべき保険金と差し引かない保険金は下図となります。

また、「医療費から除かれる額②」の10万円と1万2千円は、個々人の確定申告ごとに医療費から差し引かれます。仮にご夫婦がそれぞれ確定申告を行い、それぞれで医療費控除を受ける場合、それぞれで10万円(夫婦で20万円)差し引かれてしまいます。そのため、基本的には所得が多い方で一括して医療費控除を受けた方が有利です(控除上限があるため個別に受けた方が有利な場合もあります)。
なお、医療費控除は過去5年間遡って年度ごとに申告が可能です(セルフメディケーション税制は2017年分から)。ですので、過年度に支出した医療費で控除漏れがあれば、対象の年から5年以内であればいつでも還付申告(確定申告済みの方は更正の請求)できます。サラリーマンの方など初めて過年度分を申告される方は、もちろん当時の源泉徴収票など所得やその他控除に係る書類も必要となりますのでご注意ください。
・平成28(2016)年分 → 平成29(2017)年1月1日~令和3(2021)年12月31日
・平成29(2017)年分 → 平成30(2018)年1月1日~令和4(2022)年12月31日
・平成30(2018)年分 → 平成31(2019)年1月1日~令和5(2023)年12月31日
・令和1(2019)年分 → 令和2(2020)年1月1日~令和6(2024)年12月31日
医療費控除の対象になるもの・ならないもの
医療費控除の対象となる医療費は、原則、①医師等による診療や治療のために支払った費用、②治療や療養に必要な医薬品の購入費用と規定されています。つまり、対象となる医療費のポイントは、医師の指示と傷病や出産等の「治療」「療養(介護含む)」を目的としていることです。このポイントさえ満たせば、保険適用外のものや医療機器代、交通費等の附随費用も医療費に含まれると考えて問題ないです。
このことから、医療費控除の対象はあくまで治療のために必要な費用に限定されているため、「予防」や「美容」、「健康維持」を目的とするものは対象外となります。ですので、新型コロナウイルス感染防止のために購入したマスクやアルコール消毒液は「予防」目的のため、残念ながら医療費にはなりません。
この点、健康診断や人間ドッグ、PCR検査など、「検査」目的の費用については、その検査により異常が見つかって治療に進む場合のみ医療費控除の対象となります。
なお、治療目的であっても整体や鍼などの施術は、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師などの国家資格者が行うものに限られるのでご注意ください。
以下は、医療費控除の対象となるものと、ならないもの具体例となりますのでご参考ください。

セルフメディケーション税制の対象となる医薬品
セルフメディケーション税制は、適切な健康管理の下で医療用医薬品からの代替を進める観点から、健康の維持増進及び疾病予防への取組として「一定の取組」を行った方が対象となる医薬品を購入した場合に、その購入額のうち一定額を所得金額から控除できる制度です。(控除額の計算は先述)
対象となる医薬品は、医師によって処方される医薬品(医療用医薬品)と、薬局やドラッグストア等で購入できる医薬品に転用された医薬品(スイッチOTC医薬品)とされています。市販のスイッチOTC医薬品でも、全てのスイッチOTC医薬品が対象になるわけではなく、医療用医薬品でも使われている83成分を含む約1,600品目が対象となっています。対象となる医薬品のパッケージには以下のようなマークと、購入した際の領収書(レシート)にも控除対象である旨が記載されているのでわかりやすいです。

具体的な対象医薬費品の一覧は、以下の厚生労働省HPで随時更新されておりますのでご確認ください。
[参考]セルフメディケーション税制(特定の医薬品購入額の所得控除制度)について(厚生労働省HP)
一定の取組とは
セルフメディケーション税制の適用要件である「一定の取組」とは、自身の健康増進や疾病の予防に取り組み、対象年度内に健診など下記のいずれかを受けていることいいます。

ここでのポイントは、申告者自身が「一定の取組」を行えば良いので、ご家族(生計一親族)の「一定の取組」は不要であることと、「一定の取組」に要した費用は控除の対象とならないことです。
また、確定申告の際に必要となる書類として、セルフメディケーション税制の明細書に加え、「一定の取組をした証明書」の提出又は提示が必要となります。証明書となるものは、上記①~⑥の領収書(原本提出)や結果通知表(コピー可)となりますので、申告までに必ず入手しておきましょう。結果通知表の健診結果部分は不要ですので、気になる方は該当箇所の黒塗り又は切り取りして提出することも可能です。