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地方税2021.01.01

(固定資産税) コロナ軽減あり!償却資産の申告について

(固定資産税) コロナ軽減あり!償却資産の申告について

目次

はじめに

何かと忙しい年末年始に自治体から送らてくる「償却資産申告書在中」と記載された封筒。初めての方は、何か難しそうだし、年末年始だし、開封するのを躊躇いたくなる方も多いはずですが、今回(令和3年度分)の申告は、コロナによる軽減措置を受けるための手続きもあるので、早めの対応をお薦めします。 

今回は年明けすぐに対応できるように、償却資産申告の内容やポイント軽減制度について簡単に解説致します。 

※内容は、執筆現在当時の法令等に基づいております。文中の税法の解釈等見解にわたる部分は、執筆者の私見ですので、実際の申告等税法の解釈適用に当たっては、ご本人の責任において各顧問税理士や税務当局にご確認頂き、行ってください。

償却資産税とは 

償却資産税は固定資産税のうち、毎年11日現在に所有する土地や建物(家屋)以外の事業用有形固定資産(償却資産)について、その所有者に対し市町村(東京23区は東京都)が課する税金です。厳密には「償却資産税」という税目はありませんが、償却資産は申告が必要なことから、実務上では土地や建物(家屋)に課されるものを「固定資産税」、それ以外の事業用有形固定資産に課されるものを「償却資産税」と区別して呼んでいます。 

土地や建物(家屋)は登記されるため申告不要ですが、それ以外の事業用有形固定資産は市区町村が把握できないため、償却資産申告が必要となります。申告書が提出されると、市区町村はその申告書の内容をもとに税額計算を行い、納税者に通知する「賦課課税方式」という仕組みになっています。償却資産税の内容を簡単にまとめると以下の通りです。 

✅賦課期日:毎年1月1日(税金が課される日) 

✅申告内容:賦課期日現在所有している償却資産の内容(取得年月、取得価額、耐用年数など) 

✅申告者:償却資産の所有者(共有の場合は共有名義で代表者が申告)(償却資産を所有していない場合でも「該当資産なし」として申告する必要あり) 

✅申告先:償却資産が所在する市区町村 

✅申告期限:毎年1月31日(今回は令和3年2月1日) 

✅決定通知:賦課期日の属する年の5月から6月初旬に通知(納付書在中) 

✅納付時期:6月、9月、12月、翌2月(分割納付) 

✅課税方式:賦課課税方式(市区町村が税額計算) 

✅免税点:課税標準が150万円未満の場合は免税 

税額計算

税額(百円未満切捨):課税標準×税率1.4% 

課税標準(千円未満切捨):①初年度評価額+②次年度以降評価額 

①初年度評価額=取得価額×(1-減価率×1/2) 

②次年度以降評価額=前年度評価額×(1-減価率) 

税額計算については、実際は市区町村が行うので関係ないと思われる方も多いかもしれませんが、知っておくと150万円未満の免税点や大まかな税額を把握できます。税額計算の基礎である課税標準については、初年度だけ取得時期に係る按分計算を便宜的に行うために1/2しますが、基本的には減価償却の定率法に近い方法で算定するのでイメージしやすいかと思います。 

 なお、償却資産税は、事業用のため「租税公課」として損金又は必要経費に算入可能です。この点、事業用ではなく、プライベートで使っている土地や建物の固定資産税、自動車などに対してかかる税金は経費にならないのでご注意ください。経理方法は賦課期日(1月1日)の属する事業年度に全額未払金計上し納付時に取り崩す方法と、納付の都度租税公課を計上する方法の2パターンあり、いずれの方法も毎期継続処理が必要です。 

※上記の内容は東京都のものを参照しています。特に税率や納付時期については市区町村で異なる場合がありますのでご注意ください。 

対象資産 

償却資産とは、土地及び建物(家屋)以外の事業用有形固定資産で、その減価償却費が法人税法又は所得税法の規定による所得の計算上、損金又は必要経費に算入されるものをいいます。つまり、原則的には、法人は固定資産台帳や法人税申告書別表16等、個人は所得税の申告における減価償却明細、固定資産を管理している帳簿等に記載されている土地及び建物(家屋)以外の有形固定資産が対象なります。償却資産の対象は範囲が広いので対象から除かれるものをまとめると以下の通りとなります。 

【対象外資産】 

①土地、建物 

②自動車、原動機付自転車、小型フォークリフトのように自動車税、軽自動車税の課税対象となるもの 

無形固定資産(ソフトウェア、特許権、実用新案権など) 

繰延資産(創立費、開業費、開発費など) 

⑤骨とう品など時の経過によって価値が減少しない資産 

⑥耐用年数1年未満または取得価額10万円未満の償却資産で損金算入したもの 

⑦取得価額20万円未満の償却資産で、3年間の一括償却資産を選択したもの 

次のものは固定資産台帳等に記載がない場合などでも、償却資産に含める必要があるのでご注意ください。申告の対象となるのは、あくまで1月1日現在に「所有」しているものであるため、未使用や未稼働のものや償却済みの資産も申告対象となります。 

【償却資産に含めるもの】 

①租税特別措置法を適用し即時償却等をした資産(30万円未満の中小企業者等の少額資産損金算入特例など) 

②建物に付属している設備のうち、独立した機器としての性格が強いもの(エアコン、発電機設備など) 

③賃借人(テナント等)が取り付けた事業用の内装・造作及び建築設備等(賃借人が申告) 

建設仮勘定で処理されている資産及び簿外資産 

遊休又は未稼働の資産 

償却済の資産(耐用年数が経過した資産) 

⑦改良費(資本的支出=新たな資産の取得とみなし本体と区分して申告) 

⑧所有権移転リース資産(所有権移転外は貸主側で申告) 

⑨賃貸している資産(貸主側で申告) 

⑩福利厚生の用に供するもの 

申告書への記入 

償却資産税の申告をする場合、まず申告方式として、一般方式と電算処理方式があります。電算処理方式では毎年全資産を申告し、評価額計算を事業者側で行う必要があるので、今回は簡単な一般方式の解説をしていきます。 

一般方式では以下の3つの申告書を作成します。イメージとしては①は表紙で、初年度に②で全資産を申告し、翌年以降は②で増加分(新規取得等)、③で減少分(除却、売却等)を申告し、初年度から加減していくような流れとなります。引っ越しなどで資産の所在地が変わった場合も、移動先で②増加用、移動前で③減少用を使用し、各市区町村での増減を表現します。 

①償却資産申告書(償却資産課税台帳) 

償却資産申告の表紙となるもので、所有者情報や②③の合計額等を記載します。備考欄に、資産の増減がない場合は「増減なし」、該当資産がない場合は「該当資産なし」と記載します。 

②種類別明細書(増加資産用・全資産用) 

初年度は全資産用、翌年以降は増加資産用として使用し、新規取得や移動による受け入れ等があった場合に、その資産の名称、種類、取得年月日、取得価額、耐用年数等を記入します。過年度に申告漏れがあった場合も、増加資産としてこれに記載します(摘要に「申告漏れ」と記載)。 

③種類別明細書(減少資産用) 

基本的には、過年度申告したものが既に印字されているので、除却や売却、移動により減少した資産があれば、その資産の「異動区分」「減少事由」欄の該当箇所に○を付ければOKです。減少資産がなければ、何も記載せずそのまま提出します。過年度申告した資産で取得価額等の修正がある場合もこの申告書を使用します。 

その他、詳細な記載方法等は自治体ごとに異なりますので、詳しくは各自治体が作成している手引き等をご参照ください。下記は東京都の手引きです。 

[参考] 令和3年度 固定資産税(償却資産)申告の手引き(東京都主税局) 

https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/shisan/info/R2_shinkokutebiki.pdf

コロナ対策の軽減制度 

新型コロナウイルス感染症の影響により事業収入が一定以上減少した中小事業者等に対して、令和3年度課税の1年分に限り、事業用家屋及び償却資産に係る固定資産税が軽減(全額or1/2されます。提出書類について、事前に認定経営革新等支援機関等の確認が必要となり、申告期限(令和321日)を過ぎた場合、軽減措置を受けられなくなるため、早めの対応が必要となります。まずは、認定経営革新等支援機関等(税理士や商工会議所等)にご相談いただくのが早いかと思います。また、これも自治体によって対応が異なるため、以下は東京都の例を参考として掲載しておりますのでご留意ください。 

【認定経営革新等支援機関等の一覧】 

(出典:中小企業庁HPより) 

[参考]全国の認定経営革新等支援機関(中小企業庁HP) 

https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/kakushin/nintei/kikan.htm

【申告までの流れ】 

(出典:中小企業庁HPより) 

【軽減措置の対象となる納税義務者及び軽減割合】 

以下の一定の収入の減少があった中小事業者・小規模事業者 

 (出典:中小企業庁HPより) 

【軽減対象となる資産】 

令和3年1月1日時点で所有している事業用家屋が軽減対象となります。 

事業用家屋 

個人の所有する自己の居住用の家屋は対象外です。一方、個人事業主として不動産賃貸業を行っており、当該事業として居住用家屋を貸し付けている場合、当該事業収入が一定の減少要件等を満たせば対象となる場合があります。事業用と居住用が一体となっている家屋については、事業専用割合に応じた部分が軽減の対象となります。 

償却資産 

【提出書類】 

イ 特例申告書 

 裏面に「認定経営革新等支援機関等確認欄」がありますので、当該機関等の確認を受けてください。 

[参考]東京都の特例申告書 

https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/ncov/toku_3-1.pdf

ロ 特例対象資産一覧 

 事業用家屋を所有する場合は、①の別紙「特例対象資産一覧」を添付してください。償却資産については、令和3年度償却資産申告をもって特例対象資産一覧を提出したこととなります。 

ハ 収入が減少したことを証する書類(写) 

 会計帳簿や青色申告決算書など、収入が減少したことがわかる書類の写しを添付してください。収入減に不動産賃料の「猶予」が含まれる場合、猶予の金額や期間等を確認できる書類を添付してください。 

二(個人事業主で事業用家屋を所有している場合)特例対象家屋の事業専用割合を示す書類(写) 

 青色申告決算書や見取り図など、事業用部分の割合が分かる書類の写しを添付してください。 

[参考]新型コロナウイルス感染症の影響により事業収入が減少している中小事業者等に対する令和3年度分の固定資産税・都市計画税の軽減措置について(東京都主税局) 

https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/ncov/new_virus_kotei_small.html

その他軽減制度 

固定資産税(償却資産)の軽減制度としては、①非課税、②課税標準の特例、③減免があります該当資産を所有されている方は、提出書類、手続き方法など各自治体へご確認ください。軽減制度の適用を受ける場合は、償却資産申告書とともに、該当する旨の申告書や申請書、認定書等の提出が必要となります。 

非課税となる資産 

地方税法第348条及び地方税法附則第14条の規定に該当する資産については、固定資産税が非課税となります。 

【非課税の対象となる償却資産の例(一部抜粋)】 

(出典:東京都主税局HPより) 

【提出書類の例】 

・固定資産税・都市計画非課税申告書 

・非課税に該当することが確認できる書類(認定書類) 

課税標準の特例が適用される資産 

地方税法第349条の3及び地方税法附則第15条、第15条の2、第15条の3の規定に該当する資産については、固定資産税が軽減されます。 

【課税標準の特例の対象となる償却資産の例(一部抜粋)】 

(出典:東京都主税局HPより) 

【提出書類の例】 

・固定資産税・都市計画税の課税標準の特例に係る届出書 

・特例に該当することが確認できる書類(認定資料) 

③減免が適用される資産 

地方税法第367条の規定に基づき、各自治体が定める固定資産税の減免に係る条例に該当する資産については固定資産税の一部が減額・免除されます。 

また、減免は、減免申請がなされた日以降に到来する納期限に係る分の税額が減免されます。そのため、減免を受けようとする税額の納期限までに手続きが必要となりますのでご注意ください。なお、現在はコロナの影響により、以下のような減免手続きの延長が可能な自治体もありますのでご確認ください。 

[参考]新型コロナウイルス感染症の影響により期限までに減額の申告又は減免の申請をすることが困難な場合の手続きについて(東京都主税局HP) 

https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/ncov/new_virus_kotei_toshi.html

【減免の対象となる償却資産の例(一部抜粋)】 

(出典:東京都主税局HPより) 

【提出書類の例】 

・固定資産税減免申請書 

・減免に該当することが確認できる書類(認定資料) 

 

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