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国際課税2020.12.21

外国税額控除~まずはこれだけ~【基礎編】 

外国税額控除~まずはこれだけ~【基礎編】 

目次

本日は、昨今のグローバル化により最早、大企業のみではなく、中小企業にとっても検討する頻度も多くなってきている外国税額控除について、理解しておくべき基本的な論点についてご紹介します。

※内容は、執筆現在当時の法令等に基づいております。文中の税法の解釈等見解にわたる部分は、執筆者の私見ですので、実際の申告等税法の解釈適用に当たっては、ご本人の責任において各顧問税理士や税務当局にご確認頂き、行ってください。

外国税額控除とは?

外国税額控除とは、国際的な二重課税の排除を目的とした制度であり、外国で納付した外国税額を国内で納付すべき法人税額の範囲内で控除する仕組みをいいます。

何故、外国控除制度が必要なの?

日本では、「全世界所得課税制度」を採用しています。すなわち国内で得た所得のみならず国外で得た所得も含めて課税が行われる制度を採用しています。

ここで、国外で得た所得に対して、外国で課税を受ける場合、その国外所得については、再度わが国で課税を受けることとなります。すなわち、所得の源泉地国である外国国内で二重に課税されることになるのです。

これらの二重課税の排除のために外国税額控除制度が必要なのです。

外国税額控除の計算

以下が、外国税額控除の計算式ですが、ざっくり「①実際に外国で納めた税金を②全体の法人税額のうち国外部分③限度に控除」すると覚えておけばOKです。

控除対象外国法人税額:外国法人税のうち、外国税額控除の対象となる税額

②控除限度額:法人税額 ✖ ( 国外所得 ÷ 全世界所得(国内+国外))

③外国税額控除額:①と②のいずれか小さい額 ←日本で納める税額が限度

控除対象外国法人税額

上記の計算式と同じか、それ以上に外国税額控除を検討するうえで重要なのが、外国で納めた税金のうち、どの部分が控除の対象となるかを知っておくことです。

具体的には、控除対象外国法人税額に該当するか検討する必要があります。

控除対象外国法人税額とは、「①外国法人税」に該当し、「②一定の要件」を満たしたものをいいます。

①外国法人税(法令141条①、②)

1 外国の法令に基づき外国又はその地方公共団体により法人の所得を課税標準として課される税

2 外国又はその地方公共団体により課される次に掲げる税

一 超過利潤税その他法人の所得の特定の部分を課税標準として課される税

二 法人の所得又はその特定の部分を課税標準として課される税の附加税

三 法人の所得課税標準として課される税と同一の税目に属する税で、法人の特定の所得につき、徴税上の便宜のため、所得に代えて収入金額その他これに準ずるものを課税標準として課されるもの

四 法人の特定の所得につき、所得を課税標準とする税に代え、法人の収入金額その他これに準ずるものを課税標準として課される税

<ポイント>

所得を課税標準とする外国税額だけではなく、上記2四のように、特定の所得に対して一定の税率を乗ずる源泉所得税同じく外国法人税の範囲に含まれます

②一定の要件

以下は、仮に外国税額を支払っていたとしても、控除対象外国法人税額の対象から除かれます。

課税標準とされる金額に100分の35を乗じて計算した金額を超える部分の金額

→日本の税率以上の税額を控除してしまうと、日本で納める税金がなくなるため範囲から除かれます

・租税条約の規定により免除や減免される部分を超える金額

→届出書の提出等の一定の手続きを行えば、免除や減免を受けることが可能なのにも関わらず、それらの手続きを行っていない場合には、範囲から除かれます。

参考条文

法人税第69条  外国税額の控除(一部省略)

1 内国法人が各事業年度において外国法人税(外国の法令により課される法人税に相当する税で政令で定めるものをいう。)を納付することとなる場合には、当該事業年度の所得の金額につき第66条第1項から第3項までの規定を適用して計算した金額のうち当該事業年度の国外所得金額に対応するものとして政令で定めるところにより計算した金額を限度として、その外国法人税の額(その所得に対する負担が高率な部分として政令で定める外国法人税の額内国法人の通常行われる取引と認められないものとして政令で定める取引に基因して生じた所得に対して課される外国法人税の額、内国法人の法人税に関する法令の規定により法人税が課されないこととなる金額を課税標準として外国法人税に関する法令により課されるものとして政令で定める外国法人税の額その他政令で定める外国法人税の額を除く。以下この条において「控除対象外国法人税の額」という。)を当該事業年度の所得に対する法人税の額から控除する

法人税法施行令第141条  外国法人税の範囲

1 法第69条第1項(外国税額の控除)に規定する外国の法令により課される法人税に相当する税で政令で定めるものは、外国の法令に基づき外国又はその地方公共団体により法人の所得を課税標準として課される税(以下この款において「外国法人税」という。)とする。

2 外国又はその地方公共団体により課される次に掲げる税は、外国法人税に含まれるものとする。

一 超過利潤税その他法人の所得の特定の部分を課税標準として課される税

二 法人の所得又はその特定の部分を課税標準として課される税の附加税

三 法人の所得を課税標準として課される税と同一の税目に属する税で、法人の特定の所得につき、徴税上の便宜のため、所得に代えて収入金額その他これに準ずるものを課税標準として課されるもの

四 法人の特定の所得につき、所得を課税標準とする税に代え、法人の収入金額その他これに準ずるものを課税標準として課される税

3 外国又はその地方公共団体により課される次に掲げる税は、外国法人税に含まれないものとする。

一 税を納付する者が、当該税の納付後、任意にその金額の全部又は一部の還付を請求することができる税

二 税の納付が猶予される期間を、その税の納付をすることとなる者が任意に定めることができる税

三 複数の税率の中から税の納付をすることとなる者と外国若しくはその地方公共団体又はこれらの者により税率の合意をする権限を付与された者との合意により税率が決定された税(当該複数の税率のうち最も低い税率(当該最も低い税率が当該合意がないものとした場合に適用されるべき税率を上回る場合には当該適用されるべき税率)を上回る部分に限る。)

四 外国法人税に附帯して課される附帯税に相当する税その他これに類する税

五 我が国が租税条約を締結している条約相手国等又は外国において課される外国法人税の額のうち、当該租税条約の規定により当該条約相手国等において課することができることとされる額を超える部分に相当する金額若しくは免除することとされる額に相当する金額又は当該外国において、同条第1号に規定する所得税等の非課税等に関する規定により当該外国に係る同法第2条第3号に規定する外国居住者等の同法第5条第1号に規定する対象国内源泉所得に対して所得税若しくは法人税を軽減し、若しくは課さないこととされる条件と同等の条件により軽減することとされる部分に相当する金額若しくは免除することとされる額に相当する金額

第142条の2  外国税額控除の対象とならない外国法人税の額

1 法第69条第1項(外国税額の控除)に規定するその所得に対する負担が高率な部分として政令で定める外国法人税の額(次項及び第3項において「所得に対する負担が高率な部分の金額」という。)は、同条第1項に規定する内国法人が納付することとなる外国法人税の額のうち当該外国法人税を課す国又は地域において当該外国法人税の課税標準とされる金額に100分の35を乗じて計算した金額を超える部分の金額とする。

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