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西村雅史公認会計士税理士事務所 > ブログ > (税務相談)個人事業主 家族に対する支払いは経費になる? 
所得税2020.12.30

(税務相談)個人事業主 家族に対する支払いは経費になる? 

(税務相談)個人事業主 家族に対する支払いは経費になる? 

目次

A部長
A部長

私は来年から個人事業主として独立予定ですが、経理関係等の事務系の業務を配偶者である妻に手伝ってもらう予定でいます。報酬は、都道府県の最低時給をベースに支払う予定です。この場合何か問題等ありますでしょうか。

 

※内容は、執筆現在当時の法令等に基づいております。文中の税法の解釈等見解にわたる部分は、執筆者の私見ですので、実際の申告等税法の解釈適用に当たっては、ご本人の責任において各顧問税理士や税務当局にご確認頂き、行ってください。

原則的な取扱い

ご質問のように、家族に業務をしてもらい、その業務に対して適正対価を支払う場合には、他の第三者のパートさん等を雇う場合と何ら変わりはないため経費となりそうですが、残念ながら税務上は経費としては認めらせません

これらの取扱いは所得税法第56条に規定されており、非常に読みにくい条文となっておりますが、ここでは「恣意的に所得分散が可能なため、家族への支払いは一律に禁止されている」とだけ理解してもらえればOKです。

所得税法第56条については別の記事で詳しく解説していますので、ご興味のある方是非ご確認ください。

https://nis-cpa-firm.com/2020/12/28/%ef%bc%88%e7%a8%8e%e5%8b%99%e7%9b%b8%e8%ab%87%ef%bc%89%e3%80%87%e3%80%87%e7%a8%8e%e3%80%80%e3%80%87%e3%80%87%e3%80%80-17/

例外的な取扱い

生計が一つの家族に給与を支払う場合、原則は必要経費にはなりませんが、例外的に次のような特別の取扱いが認められています。

(1) 青色申告者の場合
 一定の要件の下に実際に支払った給与の額を必要経費とする青色事業専従者給与の特例

(2) 白色申告者の場合
 事業に専ら従事する家族従業員の数、配偶者かその他の親族かの別、所得金額に応じて計算される金額を必要経費とみなす事業専従者控除の特例

(注) 青色申告者の事業専従者として給与の支払を受ける人又は白色申告者の事業専従者である人は、控除対象配偶者や扶養親族にはなれません。

青色事業専従者給与

青色専従者給与とは、以下の要件を満たしたものをいいます。

  1.  青色事業専従者に支払われた給与であること。
  2.  「青色事業専従者給与に関する届出書を納税地の所轄税務署長に提出していること
  3. 届出書に記載されている方法により支払われその記載されている金額の範囲内で支払われたものであること
  4.  青色事業専従者給与の額は、労務の対価として相当であると認められる金額であること
青色事業専従者とは?
  1.  青色申告者と生計を一にする配偶者その他の親族であること
  2.  その年の12月31日現在で年齢が15歳以上であること
  3.  その年を通じて6月を超える期間(一定の場合には事業に従事することができる期間の2分の1を超える期間)、その青色申告者の営む事業に専ら従事していること

 

 

適正額であれば全額を経費計上可能

後述の事業者専従者給与との最大の相違点となりますが、青色専従者給与の場合には経費計上額の上限額定められていないため、上述の要件を満たし適正額であれば全額の経費計上が可能となります。

「青色事業専従者給与に関する届出」の提出時期に注意!

青色事業専従者給与に関する届出」は、必要経費に算入しようとする年の3月15日まで提出期限となります。そのため、申告しようとする年度からスグには適用できず翌年からの適用となります。

(Ex)令和3年3月15日までに提出する令和2年分の申告には適用できず、令和3年分の申告からの適用となります。

事業専従者控除

事業専従者控除とは、以下の要件を満たしたものをいいます。

  1. 白色申告者の営む事業に事業専従者がいること
  2. 確定申告書にこの控除を受ける旨やその金額など必要な事項を記載すること
事業専従者とは?
  1.  白色申告者と生計を一にする配偶者その他の親族であること
  2.  その年の12月31日現在で年齢が15歳以上であること
  3.  その年を通じて6月を超える期間、その白色申告者の営む事業に専ら従事していること

事業専従者控除額は、次の1又は2の金額のどちらか低い金額となります。

  1.  事業専従者が事業主の配偶者であれば86万円配偶者でなければ専従者一人につき50万円
  2.  この控除をする前の事業所得等の金額を専従者の数に1を足した数で割った金額

配偶者控除との有利判定が必要

事業専従者控除の適用を受ける場合には配偶者控除の併用ができません

そのため、事業専従者控除を適用する場合には配偶者控除の「38万円」を超える給与の支払いでなければメリットがありません

 

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