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所得税2020.12.25

2020年分(令和2年分)確定申告の改正点

2020年分(令和2年分)確定申告の改正点

はじめに

 2020年分(令和2年分)の確定申告では、働き方改革やフリーランスの増加など働き方の多様化により、「所得控除」関係の改正点が多くなっています。さらに電子申告等推進のための優遇措置やコロナ関係の臨時特例もあります。主要なものをピックアップしましたので今のうちに確認しておきましょう。 

申告期限と納付期限

本題の前に、念のため2020年分(令和2年分)確定申告の申告期限と納付期限について確認です。前年2019年分(令和元年分)は新型コロナウイルス拡大防止のため一律1ヶ月延長の特例がありましたが、今年分はまだ特例がないので原則通りであれば下記の通りとなります。なお、新型コロナウイルスに関連する申告・納付期限の個別延長は2020年分(令和2年分)も引き続き適用可能となっています。 

【2020年分(令和2年分)の申告・納付期限】(原則) 

所得税 2021年3月15日(月) 

…受付開始は同年2月16日(火)から。還付申告は同年1月1日から申告可。 

・贈与税 2021年3月15日(月)…受付開始は2021年2月1日(月)から 

・消費税 2021年3月31日(水) 

【2020年分(令和2年分)の振替納税制度による振替日】 

・所得税 2021年4月19日(月) 

・贈与税 振替納税制度なし 

・消費税 2021年4月23日(金) 

[参考]申告所得税及び復興特別所得税、消費税及び地方消費税(個人事業者)の振替納税手続による納付(国税庁HP) 

【2020年分(令和2年分)の延納制度による納付期限】 

・所得税 2021年5月31日(月)…振替納税の場合も同日 

・贈与税 5年以内の年賦 

・消費税 延納制度なし 

[参考]確定申告期に多いお問合せ事項Q36延納を利用するにはどのようにすればよいのですか。(国税庁HP) 

【新型コロナウイルスに関連する申告・納付期限の個別延長】 

・所得税 災害その他やむを得ない理由のやんだ日から2か月以内 

・贈与税 同上 

・消費税 同上 

期限の個別延長は、納税者又は税務代理等を行う税理士等が感染症に感染するなど、やむを得ない理由により国税の申告納付に必要な書類等の作成が遅れ、その期限までに申告納付等が困難な場合に申請できます。申請方法は申告時に申告書等の余白や特記事項欄にその旨を記載するだけなので簡単です。やむを得ない理由の例など要件の詳細は下記をご参照ください。 

[参考] 申告・納付等の期限の個別延長関係(国税庁HP) 

その他、納付方法については、クレジットカードによる納付など、現金や口座振替以外にも様々な方法がありますので、下記をご参照ください。 

[参考]国税の納付手続(納期限・振替日・納付方法)(国税庁HP) 

青色申告特別控除は電子申告等を優遇 

これまで青色申告特別控除の控除額は、「10万円」と「65万円」の2段階でしたが、2020年分からは、「10万円」「55万円」「65万円」の3段階となり、特に電子申告等を行わない方は控除額が変わるため重要な変更点となります。新たな要件は以下の通りです。 

【10万円控除】→変更なし 

①青色申告の承認を受けている 

②簡易帳簿レベル(単式簿記など)の帳簿の作成をしていること。 

【55万円控除】→これまでの65万円控除の要件 

①青色申告の承認を受けている。 

②事業所得(農業所得を含む)か不動産所得(事業的規模に限る)、山林所得がある。 

③②について正規の簿記の原則(複式簿記など)による帳簿作成を行っている。 

④③に基づいて損益計算書・貸借対照表を作成し添付し、控除金額を記載した確定申告書を法定申告期限内に提出する。 

【65万円控除】→55万円控除の要件に以下を追加 

e-Taxによる申告(電子申告)又は電子帳簿保存を行う。 

 よって、電子申告等の対応を行わなければ今回から控除額が10万円減額してしまいます。 

電子帳簿保存を行う場合、課税期間の途中からはできず、帳簿の備え付けを開始する日の3か月前の日までに申請書を税務署に提出する必要があり、2020年10月1日以降の申請では最短で2022年分からの適用になります。そのため、今から2020年分の65万円控除の適用を受けたい場合、e-Taxでの電子申告が必要になりますので、現在、e-Taxを利用していない方は、今回から切り替えることをお勧め致します。利用方法等は下記をご参照ください。 

[参考]e-Taxご利用の流れ(国税庁HP) 

基礎控除は原則10万円アップ 

所得控除のうちの一つである「基礎控除」は、基本的には誰でも受けられる控除です。これまでは所得の大小にかかわらず一律38万円でしたが、2020年分から原則10万円引き上げ、所得制限付きの最大48万円になりました。以下のようにこれまでは全員一律だったものが、今回から所得制限がついて合計所得金額2,400万円超から控除額が逓減し、2,500万円超で基礎控除ゼロになるため、合計所得金額2,400万円超の高所得者に対しては増税となっています。 

なお、後述する給与所得控除の減額により、年収850万円以下の給与所得者であれば基礎控除と給与所得控除を合わせて実質的に±ゼロになるので税額に影響はありません給与所得と関係のないフリーランスの個人事業主の方などは、基礎控除の控除額増加分のみが影響するため基本的には減税となります。

給与所得控除は原則10万円ダウン 

給与所得は会社員等の給与収入から給与所得控除を引いて所得金額を算出します。この給与所得控除については、基礎控除とは逆に、原則10万円引き下げられました。 

 「控除額が減る」となると一見、増税となったように感じますが、給与収入850万円以下であれば、先程の基礎控除の増額と合わせて実質的には±ゼロで税額に影響はありません。しかし、以下の通り給与収入が850万円超の方は、最大25万円控除額が減るため基本的には増税となります。 

(出典:国税庁HPより) 

ただし、給与収入が850万円を超えていても子育て等の負担がある方など、以下の要件を満たす方については、「所得金額調整控除」という控除が設けられ、増税にならないよう調整がなされます。 

【計算式】 

所得金額調整控除=(給与収入金額(最大1,000万円)-850万円)×10%  

【要件】 

①本人が特別障害者 

②年齢23歳未満の扶養親族を有する人 

③特別障害者である同一生計配偶者や扶養親族を有する人 

 また、よく耳にする「103万円の壁」については、改正前基礎控除38万円給与所得控除65万円で控除額が合計103万円あるため、給与収入103万円までは所得税や住民税はかからない、という話でした。この改正後も実は基礎控除48万円給与所得控除55万円で控除額が合計103万円なので、給与収入の「103万円の壁」はそのまま変わらないいうことになります。 

配偶者控除・扶養控除の要件緩和

配偶者や子、高齢の親などを扶養していれば受けられるのが配偶者控除や扶養控除です。基礎控除額が最大48万円に引き上げられたため、配偶者控除や扶養控除などの人的控除の要件となる配偶者や扶養親族等の合計所得金額の要件も10万円引き上げられることとなります。つまり、控除対象となる範囲は広がりますが、配偶者や扶養親族等の所得が「給与所得のみ」の場合は、給与所得控除の減額改正により給与収入ベースでは実質的に変更はありません。 

(出典:国税庁HPより) 

ひとり親に関する控除の見直し 

これまでの寡婦(寡夫)控除は、配偶者と離婚や死別し、その後婚姻されていない方で、実際に婚姻歴があるなど一定の要件をみたす場合に受けられる控除でした。これが2020年分からは男性向けの寡夫控除が廃止され、新たに婚姻歴・性別問わず35万円の控除が受けられる「ひとり親控除」が創設されました。これによりシングルマザーやシングルファザーの税負担は以前より軽減されることになります。また、女性の場合は、子ではない扶養親族がいる場合などでも控除(離婚はNG)が受けられるよう、本人の合計所得金額所得制限付き(500万円以下)ですが、寡婦控除は一部存続しています。 

「ひとり親控除」の要件は、以下の通りです。寡婦(寡夫)控除関連は控除漏れとなる場合が多いので税務代理等を行う場合は十分に注意しましょう。 

【「ひとり親控除」の要件】 

①同一生計の子がいる(子の合計所得金額48万円以下) 

②本人の合計所得金額が500万円以下 

③事実婚に該当する相手がいない 

(出典:財務省パンフレット「令和2年税制改正」より) 

新型コロナの臨時特例

①コロナ支援策関連の給付金など 

2020年は新型コロナウイルスの影響による不況への対策として政府より様々な支援策が講じられました。実はこの支援策により得た収入は、所得税の課税対象となり得るものが多いです。これまで確定申告が不要だった方も場合によっては一転して確定申告が必要となる場合があります。詳細は以下の記事にまとめているので是非ご参照ください。 

「Go Toキャンペーンは課税?コロナ支援策関連の所得税の取扱い」 

②中止イベントのチケット払い戻し放棄 

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う政府の自粛要請よって、さまざまな文化芸術・スポーツイベントが中止され、そのチケットの払い戻しについて話題になりました。 

このときに、「チケットの払い戻しを受けない」ことを選択した場合、一定の要件を満たすと文部科学大臣が指定した行事については、そのチケット代金は「寄附」と見なされて、寄附金控除を受けられる可能性があります。指定行事の一覧や寄附金控除の詳細については下記をご確認ください。 

[参考]チケットを払い戻さず「寄附」することにより、税優遇を受けられる制度(文化庁HP) 

[参考]文化芸術・スポーツイベントを中止等した主催者に対する払い戻し請求権を放棄した場合(国税HP) 

[参考]No.1150一定の寄附金を支払ったとき(寄附金控除)(国税庁HP) 

③住宅ローン減税の適用要件の弾力化 

住宅ローン減税については、取得日から6か月以内に入居など、適用を受けるためには入居期限の要件等を満たす必要があります。これについて、コロナの影響で工事ができず、入居期限から遅れてしまった場合でも、所得税額の特別控除が受けられる可能性がありますので、以下に該当しそうな方は確認した方が良いでしょう。 

・住宅建設の遅延等により、令和21231日までに入居できない方 

→住宅ローン減税の適用要件の弾力化の概要図①(国税庁HP) 

・中古住宅の増改築等の遅延等により、6月以内に入居できない方 

→住宅ローン減税の適用要件の弾力化の概要図②(国税庁HP) 

※内容は、執筆現在当時の法令等に基づいております。文中の税法の解釈等見解にわたる部分は、執筆者の私見ですので、実際の申告等税法の解釈適用に当たっては、ご本人の責任において行ってください。

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