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(税務相談)棚卸資産 評価方法の届出の留意点

目次

弊社は全ての商品に「最終仕入原価法」を採用していますが、既存の商品、新規事業の商品のそれぞれに「総平均法」を採用(変更)予定です。変更の方法や、留意点を教えてください。
※内容は、執筆現在当時の法令等に基づいております。文中の税法の解釈等見解にわたる部分は、執筆者の私見ですので、実際の申告等税法の解釈適用に当たっては、ご本人の責任において各顧問税理士や税務当局にご確認頂き、行ってください。
はじめに
その商品が「既存」のものか、「新規」の事業に関するものかによって申請の方法や、期限、提出書類、承認の方法が異なります。
選定方法・選定期限(新規の場合)
「棚卸資産の評価方法の届出」という書類を所轄の税務署長に、以下のように確定申告期限までに提出する必要があります(法令第29条②)。
1 普通法人を設立した場合 ⇒ 設立第1期の確定申告書の提出期限
2 公益法人等及び人格のない社団等が新たに収益事業を開始した場合 ⇒ 新たに収益事業を開始した日の属する事業年度の確定申告書の提出期限まで
3 設立後新たに他の種類の事業を開始し、あるいは事業の種類を変更した場合:他の種類の事業を開始し、あるいは事業の種類を変更した日の属する事業年度の確定申告書の提出期限
[手続名]棚卸資産の評価方法の届出|国税庁 (nta.go.jp)
【ポイント】
確定申告期限までに提出することが要件となっています(簡単!)。
選定方法・選定期限(変更の場合)
「棚卸資産の評価方法・短期売買商品等の一単位当たりの帳簿価額の算出方法・有価証券の一単位当たりの帳簿価額の算出方法の変更承認申請書」という非常に名称が長い届出書を提出する必要があります。※種類が沢山ありますが、棚卸資産の部分のみ記載すればOKです。
事業年度開始の日の前日までに、その旨、変更しようとする理由等を記載した申請書を納税地の所轄税務署長に提出し、承認を受ける必要があります(法令30条①、②)。
また、税務署長は現在の評価方法を採用してから相当期間を経過していないとき、又は変更しようとする評価の方法によっては、各事業年度の所得の金額の計算が適正に行われ難いと認めるときは、その申請を却下することができます(法令30条③)。
承認の方法としては、書面による通知か、みなし承認(事業年度開始日から6月を経過した日の前日までに承認又は却下の処分がなければ承認)です(通常はみなし承認)(法令30条④、⑤)。
[手続名]棚卸資産の評価方法・短期売買商品等の一単位当たりの帳簿価額の算出方法・有価証券の一単位当たりの帳簿価額の算出方法の変更の承認の申請|国税庁 (nta.go.jp)
【ポイント】
事業年度の開始日の前日までに提出し、承認を受けることが要件となっています(ムズイ!)。
評価方法の変更のための「相当期間」とは?
さらに、上記「相当期間を経過していないとき」とは、現在の評価の方法を採用してから3年を経過していないときのことをいいます(法基通5-2-13)。
(注) その変更承認申請書の提出がその現によっている評価の方法を採用してから3年を経過した後になされた場合であっても、その変更することについて合理的な理由がないと認められるときは、その変更を承認しないことができる。
評価方法を選定しなかった場合
評価の方法を選定しなかつた場合は、最終仕入原価法により算出した取得価額による原価法を採用したものとされます(法令第31条①)。
【留意点】
新しい事業を始めた際に届出書を提出しなかった場合には、最終仕入原価法を採用したものと税務上は取り扱われます。つまり、ここから3年間は少なくとも評価方法を変更できないこととなります。最終仕入原価法は、企業会計基準では重要性のみで認められている例外ですので、上場準備会社のような会社ですと毎回、税務調整が必要となりますので忘れずに検討することが重要です。