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印紙税2020.12.03

印紙税 誤りやすい論点(請負と委任)

印紙税 誤りやすい論点(請負と委任)

目次

はじめに

イラストの「業務委託契約書」は印紙税は必要でしょうか?

印紙税の課否判定でよく悩まされる論点に「請負と委任」というものがあります。業務委託契約書という紛らわしい名称のものがその典型例で、その業務の内容が「委任」であれば不課税文書、「請負」であれば2号文書となり、そのどちらも含まれる場合は2号文書となるので、印紙税ではかなり重要な論点となってきます。記載内容が不明確で判断が難しいものが多く、誤って委任契約書に収入印紙を添付するケースや、逆に請負契約書に収入印紙を添付せずに税務調査で指摘され余計に多くの印紙税を払うことになるケースがよくあります。 

ここでは請負と委任の違いを理解し明確な契約書を作成することで、結果的に印紙税を節約するというスタンスで解説していきます。印紙税の節約のポイントは、請負契約か(準)委任契約か、内容の違いを理解して契約形態を予め明記しておくことです。印紙税以外にも業務に対する責任関係も異なるため、トラブルになった際、主張が食い違うような事態も防げます。 

※内容は、執筆現在当時の法令等に基づいております。文中の税法の解釈等見解にわたる部分は、執筆者の私見ですので、実際の申告等税法の解釈適用に当たっては、ご本人の責任において各顧問税理士や税務当局にご確認頂き、行ってください。

請負契約とは

請負契約とは、請負人がある仕事を完成させることを約束して、注文者がその仕事の結果に対して報酬を支払うことを約束する契約をいいます。(民法632条)業務途中のままになってしまったもの、業務完了したが成果が出なかったものには、本来対価は発生しません。 

つまり、請負は完成された仕事の結果を目的とする点(仕事完成義務)に特質があり、仕事が完成されるならば、下請負に出してもよく、その仕事を完成させなければ、債務不履行責任を負うような契約です(瑕疵担保責任)。 

 また、請負とは仕事の完成と報酬の支払とが対価関係にあることが必要なため、仕事の完成の有無にかかわらず報酬が支払われるものは請負契約にはならないものが多く、報酬が全く支払われないようなものは請負には該当しません(おおむね委任に該当します。)。 

委任契約とは 

委任契約とは、委任者が法律行為をすることを受任者に委託し、受任者がこれを承諾することによってその効力を生じる契約をいます(民法643条)。また、法律行為をすることの委託ではない準委任も委任の一つとされます。(民法656条) 

つまり委任は、何らかの行為そのものの実施そのものを目的としており、一般的には行為の遂行に応じた時間や工数応じて報酬は支払われますが、対価の支払いは必ずしも必要ではありません「仕事の完成」という目に見えた結果も必要ありません。 

 また、委任は行為の実施(業務の遂行)そのものが目的となるため、その過程に債務不履行責任が生じます(善管注意義務)。 

請負と委任の違い 

 請負の特徴は、仕事の完成義務とその成果物に対する報酬の支払い、瑕疵担保責任あることです。 

 委任の特徴は、逆に仕事の完成義務はなく、業務の遂行とその過程に善管注意義務が生じることです。 

 つまり、請負と委任の決定的な相違点は「仕事の完成義務(成果物)の有無」ということになります。例えば、成果物がない以上報酬を支払いたくないと相手方が意思表示しているのであれば、それは請負契約とすべきことになります。このような場合は、成果物の有無とともにその「検収後に報酬を支払う」というような文言を記載しておくことで請負契約であることが明確になります。 

誤りやすい文書例 

・保守契約書 

 例えば、ソフトウェア保守契約の場合、単に操作サポート、電話対応等のみの契約内容の場合は成果物のない「委任」として不課税、システム不具合の修正・保守作業等が求められる場合は成果物のある「請負」として2号文書、そのどちらも含まれる場合も2号文書に該当します。 

・顧問契約書 

 例えば、税理士の顧問契約の場合、単に税務相談や書類のチェックのみで成果物の作成が求められていない場合は「委任」として不課税、税務書類の作成や申告書類の作成など成果物の作成が求められる場合は「請負」として2号文書、そのどちらも含まれる場合も2号文書に該当します。 

 

 

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