BLOGブログ

西村雅史公認会計士税理士事務所 > ブログ > 貸倒引当金 税務上の論点整理 実務ポイント
法人税2020.10.23

貸倒引当金 税務上の論点整理 実務ポイント

貸倒引当金 税務上の論点整理 実務ポイント

目次

昨日は、貸倒引当金の会計上の論点についてご紹介しましたが、本日は税務上の論点を条文を確認しながら確認してきます。

※内容は、執筆現在当時の法令等に基づいております。文中の税法の解釈等見解にわたる部分は、執筆者の私見ですので、実際の申告等税法の解釈適用に当たっては、ご本人の責任において各顧問税理士や税務当局にご確認頂き、行ってください。

適用対象法人

事業年度終了の時において次に該当する内国法人​が該当となります(法人税法52条①)。

  1. 普通法人のうち、資本金の額若しくは出資金の額が1億円以下(期末において資本金の額5億円以上である法人による完全支配関係があるもの等を除く。)であるもの又は資本若しくは出資を有しないもの
  2. 公益法人又は共同組合等、人格のない社団等
  3. ​銀行・保険会社等

※個別評価金銭債権、及び一括評価金銭債権ともに上記の要件となります(間違えて覚えている人が多い)。

一括評価金銭債権

売掛金、貸付金その他これらに準ずる金銭債権から個別評価金銭債権を除いたもの​

個別評価金銭債権

その一部につき貸倒その他これに類する事由による損失が見込まれる金銭債権​

※保証金や前渡金等も含まれる(法基通11-2-3)​

  1. 会社更生法の規定による更生計画認可の決定等に基づき、弁済猶予又は賦払弁済される場合(法律的基準)​
  2. 債務者の債務超過の状態が相当期間継続し、事業に好転の見通しがないこと、災害、経済事情の急変等により多大な損害が生じたことにより、その債権の一部につき取立等の見込が無い場合(実質的基準)​
  3. 債務者につき、会社更生法の規定による更生手続開始の申し立て等の事由が生じている場合(形式的基準)​
  4. 外国の政府等に対する個別評価金銭債権につき、長期にわたる債務の履行遅滞により経済的な価値が著しく減少し、かつ、弁済を受けることが著しく困難であると認められる場合​

個別評価による繰入限度額(法律的基準)

① 法律的基準による繰入限度額(法令96条1項1号)​

② 法律的基準の設定・繰入事由​

以下の事由による弁済等があった場合

会社更生法又は金融機関等の更生手続の特例等に関する法律の規定による更生計画認可の決定​

民事再生法の規定による再生計画認可の決定​

・会社法の規定による特別清算に係る協定の認可の決定

・法令の規定による整理手続によらない関係者の協議決定で次に掲げるもの​

  (イ) 債権者集会の協議決定で合理的な基準により債務者の負債整理を定めているもの。​

  (ロ) 行政機関、金融機関その他第三者のあっせんによる当事者間の協議により締結された契約で​
   その内容が(イ)に準ずるもの​

③ 法律的基準のポイント​

・ 弁済開始から5年以降の債権=繰入額

・ 貸倒損失の要件である法基通9-6-1の整理手続と同一の内容。​

・ 破産法による整理手続は規定されていない。

・ 確定申告書に明細書を添付していない場合は適用がないが、例えば税務調査等で、貸倒損失が否認されたことに基因するものであり、かつその後その明細書が提出された時は、限度額の範囲内で損金算入することができます。(法基通11-2-2)​

個別評価による繰入限度額(実質的基準

① 実質的基準による繰入限度額(法令96条1項2号)

一部の金額につきその取立て等の見込みがないと認められる金額

② 実質的基準のポイント​

・ あくまで債務者の財政状態を考慮して回収不能見込額を算定する方法。債務超過であるかどうか​
時価基準により判定。​​

・ 債務超過状態の相当期間の継続はおおむね1年以上であり、これに債務超過に至った事情と​事業好転の見通しを合わせて判定(法基通11-2-6)​。​

・ 債務者に対して担保物を有しているので貸倒損失の要件である法基通9-6-2が適用されないに、この実質的基準による貸倒引当金が適用される。

・ 法律的基準が生じている場合は、この規定の適用はない。​

・ 対象金銭債権から物的担保物の処分による回収見込額及び人的保証に係る回収可能額の両方を控除して限度額を算定する(法基通11-2-7)。​

個別評価による繰入限度額(形式的基準

① 形式的基準による繰入限度額(法令96条1項3号)

② 形式的基準の設定・繰入事由​

会社更生法又は金融機関等の更生手続の特例等に関する法律の規定による更生手続開始の申立て​

民事再生法の規定による再生手続開始の申立て

破産法の規定による破産手続開始の申立て​

・会社法の規定による特別清算開始の申立て​

手形交換所による取引停止処分​

③ 形式的基準のポイント​

・ 一括評価金銭債権において適用される「実質的に債権とみられないもの」においては支払手形を含めるが、個別評価金銭債権にかかる形式的基準においては含めない。​

・ 保証債務の履行により取立等が見込まれる部分の金額は金融機関等によって保障された部分のみであり、一般事業者会社又は個人の保証人が存在したとしても、考慮する必要はない。​

一括評価による繰入限度額(実績率)

① 一括評価による繰入限度額(法令96条6項)

期末の一括評価金銭債権 ✖ 貸倒実績率

② 一括評価金銭債権の範囲

一括評価金銭債権の額に含まれるもの一括評価金銭債権の額に含まれないもの​
売掛金​
受取手形​
割引手形、裏書手形
貸付金​
未収入金​
資産の譲渡対価の未収入金​
役務提供の対価の未収入金​
貸付金の未収利子​
未収の損害賠償金​
先日付小切手​
立替金、仮払金等(他人のための立替払い)​
保証債務を履行した場合の求償権​
未収入金​
預貯金の未収利子​
公社債の未収利子​
未収配当金​
保証金、敷金、預け金​
手付金、前渡金​
前払給与、概算払旅費​
仕入割戻の未収入金​




③ 貸倒実績率(小数点4位未満切上)

一括評価による繰入限度額(法定繰入率)

① 法定繰入率による繰入限度額(措法57の9) 

② 実質的に債権とみなられない金額(措令33の7③)

③ 法定繰入率(措令33の7④)

卸売業及び小売業​1,000分の10​
製造業​1,000分の 8​
金融業及び保険料1,000分の 3
割賦販売小売業​1,000分の13​
その他の事業​1,000分の 6​

 

シェアする

ニッシー@税理士をフォローする

関連記事

お気軽にお問合せ・
ご相談ください