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貸倒引当金 会計上の論点の整理、実務のポイント

目次
本日は、税務上の貸倒引当金・貸倒損失の論点の前に、会計上の論点を整理し、実務のポイント等につてもご紹介します。
※内容は、執筆現在当時の法令等に基づいております。文中の税法の解釈等見解にわたる部分は、執筆者の私見ですので、実際の申告等税法の解釈適用に当たっては、ご本人の責任において各顧問税理士や税務当局にご確認頂き、行ってください。
債権の区分
貸倒見積高の算定にあたっては、債務者の財政状態及び経営成績等に応じて、債権を次のように区分します(金融商品会計基準27項)。
(1) 一般債権・・・経営状態に重大な問題が生じていない債務者に対する債権
(2) 貸倒懸念債権・・・経営破綻の状態には至っていないが、債務の弁済に重大な問題が生じているか又は生じる可能性の高い債務者に対する債権
(3) 破産更生債権等・・・経営破綻又は実質的に経営破綻に陥っている債務者に対する債権
債権の区分方法
債権の計上月(売掛金等の場合)又は弁済期限(貸付金等の場合)からの経過期間に応じて債権区分を行うなどの方法で区分する(金融商品実務指針107項) 。
※原則は、個々に査定して区分する方法ですが、貸金業以外は個々の会社の財務情報の入手は困難のため、通常は上記の方法により区分します。
貸倒見積高の算定方法
債権の貸倒見積高は、その区分に応じてそれぞれ次の方法により算定する(金融商品会計基準28項)。
(1)一般債権⇒貸倒実績率法
(2)貸倒懸念債権⇒財務内容評価法orキャッシュ・フロー見積法
(3)破産更生債権等⇒財務内容評価法
貸倒実績率法(金融商品会計実務指針110)
債権全体又は同種(※)・同類(※)の債権ごとに、債権の状況に応じて求めた過去の貸倒実績率等合理的な基準により貸倒見積高を算定する方法
※同種・・売掛金・受取手形・貸付金・未収金等の同一のもの
※同類・・同種よりも大きな区分(営業債権or営業外債権、短期or長期etc)
貸倒実績率とは?⇒下記により算定
分子=平均回収期間内(通常1年)に発生した貸倒損失額をとして算定
分母=ある期における債権残高
⇒当期を含む 2~3算定期間に係る貸倒実績率の平均値による。
実務上のポイント
過去の貸倒実績率がない会社については、実績繰入率はどのよう算定されるでしょうか?
金融商品会計に関するQ&AのQ40では、「将来においても貸倒の発生可能性がないと合理的に予想される場合には、貸倒引当金繰入額はゼロとなります」と記載されており、基本的には貸倒引当金を考慮することが求められております。
しかしながら、実際の上場会社や上場準備会社の実務では、ゼロ%として評価することが監査法人側から求められることもある(ことが多い)ため、注意が必要です。
財務内容評価法(貸倒懸念債権)(金融商品会計実務指針114)
【原則】
担保又は保証が付されている債権について、債権額から担保の処分見込額及び保証による回収見込額を減額し、その残高について債務者の財政状態および経営成績を考慮して貸倒見積高を算定する方法
【簡便】
一般事業会社については資料入手が困難のため、貸倒懸念債権と初めて認定した期には、担保の処分見込額等を控除した残額の50%を引き当て、次年度以降、毎期見直を行う方法
実務上のポイント
通常実務では、財務諸表の入手が難しいため、貸倒見積高を50%もしくは100%で見積もることが多いのではと感じています。そのほか、財務諸表やその科目内訳の情報を入手できるようなケースでは、時価ベースに評価した後の純資産額と債権額を比較し、個別に貸倒見積高を算定するケースもある。
財務内容評価法(破産更生債権等) (金融商品会計実務指針117)
債権額から担保の処分見込額及び保証による回収見込額を減額し、その残額を貸倒見積高とする。
キャッシュ・フロー見積法(金融商品会計実務指針115)
債権の元本回収及び利息の受取に係るキャッシュ・フローを合理的に見積もることができる債権について適用可能な貸倒見積高の算定方法
債権の発生又は取得当初における将来キャッシュ・フローと債権の帳簿価額との差額が一定率となるような割引率を算出し、債権の元本及び利息について、元本の回収及び利息の受取が見込まれるときから当期末までの期間にわたり、債権の発生又は取得当初の割引率で割り引いた現在価値の総額と債権の帳簿価額との差額を貸倒見積高とする。
実務上のポイント
実務では、ほとんどのケースで採用されることはないです。貸倒懸念債権の場合には、通常は財務内容評価法により貸倒見積高の算定が行われます(既に回収遅延が起きているなかで、未確定の将来のキャッシュ・フローにより貸倒見積高を算定することは難しいため。)。