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(税務相談)源泉所得税 海外のソフトウェア開発会社へ制作委託をした場合の取扱い

目次
本日は、今では普通になりつつある海外との取引に際して、報酬を支払った場合に源泉税を徴収する必要があるかについて、確認していきたいと思います。

弊社は国内でゲーム用のアプリケーション制作をしているのですが、その業務の一部を海外のオフショア開発会社に委託しようと思います。ゲームの仕様や構成については弊社で企画し、単純なコードの入力のみを外注する予定です。
この場合に、源泉税を徴収する必要はありますでしょうか。なお、当該外注業者は日本国内に事業所等は保有していないとのことです。
※内容は、執筆現在当時の法令等に基づいております。文中の税法の解釈等見解にわたる部分は、執筆者の私見ですので、実際の申告等税法の解釈適用に当たっては、ご本人の責任において各顧問税理士や税務当局にご確認頂き、行ってください。
日本国内の取扱い
日本国内の法律では、今回の業務内容は、「人的役務の提供事業の対価」に該当すると考えられます。しかしながら、今回の業務は、日本国外で行われておりますので「国外源泉所得」に該当し、源泉徴収を行う必要はありません。
なお、ここで検討は終わりません。租税条約に異なる取扱いがある場合には、そちらが優先されますので租税条約の確認が必要となります。
租税条約の取扱い
多くの国同士で締結されているOECDモデルの租税条約によれば、今回の所得は「事業所得」に該当することとなります。事業所得の場合には、「PEなければ課税なし」の通り、恒久的施設が日本にない場合には、源泉徴収を行う必要はありません。
なおインドのように一部の例外国では、今回の人的役務の提供のような場合であっても源泉徴収が必要となります。
ソフトウェアの開発自体を委託した場合には?
今回の質問では、企画自体は日本で行い、委託業務の内容は単なるコード入力ですが、もし仮にこれが企画や構成を含めて制作を委託している場合には、「使用料等※」に該当するものと考えられます。
※使用料等・・・著作権の使用料又は譲渡による対価が含まれます。著作権の使用料とは、著作物の複製・利用等によって支払いを受ける対価をいい、著作権の譲渡とは著作権の一部が譲渡される場合の対価をいいます(所基通161-35)。
ポイントは、過去の裁決事例によれば、税法上の「著作権」は明確な定義はありませんが、著作権法上の「著作権」と同義と考え、裁決事例では、いわゆる企画からその業務のほとんどを外注しているため、外注先が原始的には著作権を取得していると判断しております。またその判断の中では、「創作的」という言い方もされていますが、著作権を取得しているかを判断する際には、重要な判断要素となるようです。
※内容は、執筆現在当時の法令等に基づいております。文中の税法の解釈等見解にわたる部分は、執筆者の私見ですので、実際の申告等税法の解釈適用に当たっては、ご本人の責任において行ってください。