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法人税2020.10.18

法人税 役員退職金の算定ロジック(実務編)

法人税 役員退職金の算定ロジック(実務編)

目次

本日は具体的に、役員退職金を算定するうえでの税法上のロジックをご紹介したと思います。

※内容は、執筆現在当時の法令等に基づいております。文中の税法の解釈等見解にわたる部分は、執筆者の私見ですので、実際の申告等税法の解釈適用に当たっては、ご本人の責任において各顧問税理士や税務当局にご確認頂き、行ってください。

総論

法人税法基本通達 9-2-27の2  業績連動給与に該当しない退職給与(H29年税制改正新設)

いわゆる功績倍率法に基づいて支給する退職給与は、法第34条第5項《業績連動給与》に規定する業績連動給与に該当しないのであるから、同条第1項《役員給与の損金不算入》の規定の適用はないことに留意する。​

(注) 本文の功績倍率法とは、役員の退職の直前に支給した給与の額を基礎として、役員の法人の業務に従事した期間及び役員の職責に応じた倍率を乗ずる方法により支給する金額が算定される方法をいう。​

ポイント​

実務上は、功績倍率法に基づいて役員退職金を算定することが一般的。

功績倍率は、類似法人の役員の退職給与の額を参考にすべきと多くの判例でされているが、実務上は、下記のような倍率を規程に基づき使用しているケースが圧倒多数。

EX)功績倍率法:代取3.0専務2.4常務2.2平取1.8監査役1.6

(注意)功績倍率が3倍以内に収まっていれば、現場(税務調査等)では機能するが多いが、争いになれば、それよりも低い倍率しか認められないということが裁決事例・判例等では見受けられる。

役員退職金の算定方法 

最高功績倍率法特段の事情がある場合に採用​

平均功績倍率法課税庁の基本的なスタンス・判例での採用も多い​

一年当たり平均額法最終報酬月額が大幅に引き下げられた等の特段の事情がある場合に採用

最終報酬月額​とは

(最終報酬月額の意義)​

平成27年6月23日裁決,関裁(法)平26-50,TAINZ FO-2-599​

最終報酬月額は通常,当該退職役員の在職期間中における報酬の最高額を示すものであるとともに,退職の直前に大幅に引き下げられたなどの特段の事情がある場合を除き当該退職役員の在職期間中における法人に対する功績の程度を最もよく反映しているものといえるものであること,及び,本件事業年度において,役員に対する事前確定届出給与(賞与)の支払はないことから,この点に関する請求人の主張は採用できない」

ポイント

上記のように最終報酬月額が現在までの役員の功績を最も反映した「最高額」であれば(平均)功績倍率法による計算で特段問題ないが、業績の悪化などにより一時的に役員の報酬月額を減額しているような場合,その減額後の報酬月額を最終報酬月額として退職給与の額を算定すると,退職給与の額が過少になって,在職中の功績に応じた合理的なものにならない場合には、一年当たり平均額法を採用することが合理的。​

類似法人の情報取得について​

・残波事件(東京地判・平成28.4.22

「その上、原告の主張においても、上記3要素を用いて相当額を算定した上で、類似法人の役員給与額を確認的に使用するという方法が、具体的にどのようなものであるのかは明らかでないし、類似法人の役員給与データを入手できる社会状況が消失した旨の主張も、財務省や国税庁がホームページ上で公表している「法人企業統計年報特集」、「民間給与実態統計調査」や税務関係の雑誌である「週刊税務通信」の掲載記事や、税務関係の書籍にも参考となる資料が数多く掲載されているし、PのTSRレポートのサンプルには、役員数や役員報酬の金額が記載されているのであって、これらの資料から、類似法人の一人当たりの平均役員給与額を算定することも可能であることからすれば、理由がない。 (原告主張への反論)」​

ポイント

・類似法人の情報については、上記の資料が判示されており、今後は国側もこれらの資料から功績倍率を使用することについての否認は難しくなると思われる。

勤続年数​

平成27年6月23日裁決,関裁(法)平26-50,TAINZ FO-2-599​

「原処分庁が本件役員退職給与相当額の算定方法として平均功績倍率法を用いたこと、及び、同業類似法人の選定に当たっての選定基準は、いずれも合理的であるというべきである。原処分庁は、代表取締役の勤続年数の取扱いについて、1年未満の端数処理に統一性が見られない。当審判所は、勤続年数については、1年未満の端数は切り上げ、また、功績倍率の小数点以下については、小数点第3位以下を切り上げて算定するのが相当であると認める。」​

ポイント

その他にも、同様の判例があるため、功績倍率法における勤続年数については、所得税の退職所得計算の際に使用する退職所得控除と同様、切り上げて計算することができる。

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