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意外と知らないと同族会社の債務免除の注意点

本日は債務免除であまり知られていないが、実は恐ろしい論点を確認していきたいと思います。
法人の債務免除益だけでは終わらない・・(ダブルパンチ!)
オーナー社長以外にも株主が複数名いる同族会社のケースを考えていきたいと思います。ここでオーナー社長が、会社に貸し付けている債権を免除した場合にどのような課税関係が生じてくるでしょうか??
まずはじめにイメージしやすいのは、会社は社長から債務の免除という経済的な利益を受けているため、その金額に相当する債務免除益に対して法人税が課税されということでしょう。
・・・実はここで課税関係は終了しません。ポイントは、社長以外にも株主が存在していることです。どういうことかといいますと、社長が債務を免除したことにより、会社のB/S構成は負債⇒利益に変化し、純資産額(株式の価値)が増加することになります。これは税務的には、会社を通して社長から他の株主に贈与があったものとしてみなされ(株主間のみなし)贈与税が課されてしまうのです。
実務上問題となるケース
実際の実務でどういうケースで生じてくるでしょう?
・相続税対策
相続税法では、いくら回収可能性が低い場合にも、債権でそのまま保有している場合には額面金額に対して相続税が課税されることとなるため、そのまま素直に債務免除すると株主間のみなし贈与ということなります。。ので、贈与税率が高くならない範囲での暦年での債務免除か、もしくは、すべての株式を取得して、他に株主がいない状態にしてから債務免除する等のアドバイスが必要となります。
・上場までの資本政策
通常、上場する会社は、最初はオーナー=社長が1人で会社を始めて、事業が順調に成長していき、複数の株主から出資を受け、場合によっては従業員にインセンティブ目的で株を保有させて上場していくという過程を取るケースが多いですが、上場までの間で役員との取引は解消する必要があります。少し難しい論点のためまた後日、別の機会に説明しますが、債務解消のために、他の株主が入った後に行ったDES(デッドエクイティスワップ)は税務上、債務免除益となりますので同様に、しかも他人との株主間のみなし贈与が発生してしまいます。。資本政策は計画的に行うことを、クライアントに説明が必要な典型例の一つかと思います。
参考条文
相続税法基本通達9-2 株式又は出資の価額が増加した場合
同族会社(省略)の株式又は出資の価額が、例えば、次に掲げる場合に該当して増加したときにおいては、その株主又は社員が当該株式又は出資の価額のうち増加した部分に相当する金額を、それぞれ次に掲げる者から贈与によって取得したものとして取り扱うものとする。この場合における贈与による財産の取得の時期は、財産の提供があった時、債務の免除があった時又は財産の譲渡があった時によるものとする。
(1) 会社に対し無償で財産の提供があった場合 当該財産を提供した者
(2) 時価より著しく低い価額で現物出資があった場合 当該現物出資をした者
(3) 対価を受けないで会社の債務の免除、引受け又は弁済があった場合 当該債務の免除、引受け又は弁済をした者
(4) 会社に対し時価より著しく低い価額の対価で財産の譲渡をした場合 当該財産の譲渡をした者
相続税基本通達 9-3 会社が資力を喪失した場合における私財提供等
同族会社の取締役、業務を執行する社員その他の者が、その会社が資力を喪失した場合において9-2の(1)から(4)までに掲げる行為をしたときは、それらの行為によりその会社が受けた利益に相当する金額のうち、その会社の債務超過額に相当する部分の金額については、9-2にかかわらず、贈与によって取得したものとして取り扱わないものとする。
なお、会社が資力を喪失した場合とは、法令に基づく会社更生、再生計画認可の決定、会社の整理等の法定手続による整理のほか、株主総会の決議、債権者集会の協議等により再建整備のために負債整理に入ったような場合をいうのであって、単に一時的に債務超過となっている場合は、これに該当しないのであるから留意する。
※内容は、執筆現在当時の法令等に基づいております。文中の税法の解釈等見解にわたる部分は、執筆者の私見ですので、実際の申告等税法の解釈適用に当たっては、ご本人の責任において行ってください。