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印紙税の基礎(後編)~記載金額の判定基準、ペナルティ~

目次
記載金額の判定
課税文書であることがわかったら、課税物件表(印紙税額一覧表)に文書の種類と記載金額を当てはめて印紙税額を算定します。記載金額が一定額未満で非課税となるものや、領収書のように記載金額に応じて印紙税額が決定されるものなど、記載金額の判定もとても重要なものとなります。
※内容は、執筆現在当時の法令等に基づいております。文中の税法の解釈等見解にわたる部分は、執筆者の私見ですので、実際の申告等税法の解釈適用に当たっては、ご本人の責任において各顧問税理士や税務当局にご確認頂き、行ってください。
記載金額とは、「契約金額、券面金額その他当該文書により証されるべき事項に係る金額として当該文書に記載された金額」とされています(印紙税法別表第一の課税物件表の適用に関する通則4) 。
つまり、契約書や領収書に書かれた金額のことなので、そんなに難しく考える必要もなさそうですが、単価と数量だけ記載されているものや、金額は見積書の通りとして明確な記載金額がないものなど多種多様であるため、その文書の内容に応じて以下のルールに従って記載金額を特定します。
①不動産などの譲渡に関する契約書及び債権の譲渡契約書
・売買の場合:売買金額(時価×)
・交換の場合:交換金額
・代物弁済の場合:代物弁済により消滅する債務の金額
・法人などに対する現物出資の場合:出資金額
・その他:譲渡対価の金額
・贈与契約の場合:契約金額なし(契約内容により税額がことなるため注意)
②土地の賃借権の設定又は譲渡に関する契約書:設定又は譲渡の対価たる金額
設定又は譲渡の対価たる金額とは、権利金その他名称を問わず後日返還されないものをいい、賃貸料は記載金額に入りません。
③消費貸借に関する契約書:消費貸借金額(利息金額は除く)
④運送に関する契約書:運送料又は用船料
⑤請負に関する契約書:請負金額
⑥債務引受けに関する契約書:引き受ける債務の金額
⑦記載金額が外国通貨により表示されている契約書
その文書を作成した日の基準外国為替相場又は裁定外国為替相場により本邦通貨に換算した金額。
⑧予定金額等が記載されている契約書
・記載された契約金額等が予定金額又は概算金額 → 予定金額又は概算金額
・記載された契約金額等が最低金額又は最高金額 → 最低金額又は最高金額
⑨契約の一部についての契約金額のみが記載されている契約書
記載されている一部の金額が記載金額となる。(手付金額や内入金額は除く)
⑩月単位などで契約金額を定めている契約書
・契約期間の記載があるもの → 月単位等の金額×契約期間の月数等
・契約期間の記載がないもの → 記載金額なし
なお、契約期間の更新の定めがあるものについては、更新前の期間のみ で計算することになります。
⑪単価、数量などにより契約金額等が計算できる契約書等
その文書に記載されている単価及び数量、記号その他により契約金額等を計算できる場合は、その計算により算出した金額が記載金額となります。
⑫消費税及び地方消費税の金額が区分記載されている契約書や領収書
消費税額等が区分記載されている場合又は税込価格と税抜価格の両方が記載されていること等により、その取引における消費税額等の金額が明らかな場合には、1号、2号、17号文書についてはその消費税額等の金額は記載金額に含めないこととされています。
ペナルティ(収入印紙を貼らなかったらどうなる?)
最後に収入印紙を貼らなかった、消印しなかった場合のペナルティについてです。
契約書等の課税文書に貼るべき収入印紙が貼っていない場合や納めるべき税額が不足していた場合、印紙税が課税されることを知らなかった、収入印紙を貼り忘れた等の事情を問わず、納付しなかった印紙税額の3倍(自主的に申し出たときは1.1倍)、消印忘れの場合は1倍の過怠税が課税されます。この過怠税は法人税法上の損金や所得税法上の必要経費にも算入されないため、場合によってはかなり痛い出費になってしまいますので本当にご注意ください。
なお、課否判定の誤りによる納付額の超過などがあった場合には、申請をすれば過誤納金として還付を受けることができます。
また、未使用の収入印紙や誤って貼り付けた収入印紙は、郵便局において交換手数料(収入印紙1枚につき5円)を支払えばほかの額面の収入印紙と交換可能です。
おわりに
書き切れていないルールはたくさんありますが、簡単なルールについては前編・中編・後編を通して一通り触れられたと思っています。もうルールばっかりで嫌いになりますが、ペナルティが結構厳しいため、契約書等を作成される場合には、是非国税庁の「印紙税の手引き」をご参考頂けたらと思います。
また、勘の鋭い方ならお察しかと思いますが、印紙税は契約書の内容や記載金額の書き方を工夫することで節税になったり、ペーパーレス化した現代において実は「紙」の原本のみに課税されるものであったりと、面白い論点もありますので、また記事にしようと思います。