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印紙税の基礎(前編)~概要編~

はじめに
印紙税は収入印紙という形で様々なシーンで目にすることが多いと思いますが、何の税金なのか、いまいちピンとこない方も多いのではないでしょうか。実務でも顧問先から問い合わせが多い質問のうちの一つですが、実は税理士が業務として関与できる税目には印紙税は入っていません(税理士法第2条)。もちろん税理士の受験科目にも存在しないため、税理士も実務になって初めて勉強する税法です。
また印紙税は、納付が漏れてしまった場合、納付しなかった印紙税額の3倍の過怠税があるなど、ペナルティが非常に怖い税目でもあります。
ということで今回は、接する機会は多いが、感覚的に難しい「印紙税」について、基本的な内容を前編、中編、後編にわたって解説していきます。
印紙税とは(誰がいつどうやって納税する?)
まず、印紙税のイメージを膨らませるため、誰がいつどのように納税しているか解説していきます。
分かりやすい例として、家電量販店で高額な家電を購入した際に領収書に貼りつけられている切手のような収入印紙ですが、あれは印紙税をお店側が納税したという事です。つまり、印紙税は、領収書などの「文書」に、「収入印紙」を添付・消印をすることで納税する(正確には納税したことを証明できる)税金です。そして、何に対して課されているかというと、領収書という経済取引の事実を証明する「文書」に対して課されています。ピンときにくいですが、領収書があれば初期不良等での返品交換ができたりしますよね?それは領収書があるからこそその家電量販店で購入した事実を証明できるからで、法律のもと安心・信頼の取引ができるのだから、その支えている法律に対して税金納めましょうといったイメージです。
なお、印紙税の納税義務は文書を「作成した時」にその「作成者」に発生します。具体的には、領収書等であれば交付の時に交付側が、契約書等であれば契約当事者の意思の合致を証明(契約者双方の署名押印が揃う)する時に契約者双方に納税義務が発生します。契約書等の場合は契約者双方の連帯負担となりますが、負担割合の定めはないため、当事者の合意があればどんな負担割合でも問題ありません。国税としては納税してくれれば何でもOKのようです。
また、収入印紙に消印がないと収入印紙を使い回していないことを証明できないため、印紙税を納付した証明にならないので注意してください。
収入印紙を添付する必要がある文書(課税文書とは)
では、収入印紙を添付する必要がある文書とは何でしょうか。
印紙税は、日常の経済取引に伴って作成する契約書や領収書などの文書に課税されるのですが、印紙税法別表第一の「課税物件表(印紙税額一覧表)」に課税対象となる20種類の文書が掲げられています。つまり、この20種類の文書以外には課税されません。(不課税文書)
また、この20種類の文書に該当しても、次のいずれか条件を満たせば、印紙税が課されない文書(非課税文書)となります。
①契約金額が少額なものなど(課税物件表の非課税物件欄)
②国、地方公共団体又はその他の非課税法人(印紙税法別表第二)が作成するもの
③日銀や独立行政法人など特定の者の作成する特定の文書(印紙税法別表第三)
④国民健康保険法や厚生年金法などの特別の法律により非課税とされる文書
つまり、印紙税は「課税物件表」の20種類の文書に該当し、上記の「非課税文書」に該当しない文書(課税文書)に課税されることとなります。
課税文書に該当することがわかれば、課税物件表に当てはめて、記載金額等を参照して印紙税額を算出します。
[参考]課税物件表(印紙税額一覧表)(国税庁HP)https://www.nta.go.jp/publication/pamph/inshi/tebiki/pdf/08.pdf
※内容は、執筆現在当時の法令等に基づいております。文中の税法の解釈等見解にわたる部分は、執筆者の私見ですので、実際の申告等税法の解釈適用に当たっては、ご本人の責任において行ってください。