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印紙税2020.11.05

印紙税の基礎(中編)~主な課税文書のポイント~

印紙税の基礎(中編)~主な課税文書のポイント~

主な課税文書 

「課税物件表」の20種類の文書のうち、ここでは代表的な4つの課税文書についてポイントを解説していきますそれぞれ例となる契約書名等をあげていますが、実際は文書の名称や形式的な文言にとらわれず、記載されている文言の実質的な意義を汲み取って課税文書か判断することとなりますのでご注意ください。 

なお、20種類の文書のうち、2以上の事項が併記又は混合記載されている場合は、一定のルールに従って最終的な所属を判断するのですが、少し複雑なので内容は下記国税庁HPをご参照ください。 

※内容は、執筆現在当時の法令等に基づいております。文中の税法の解釈等見解にわたる部分は、執筆者の私見ですので、実際の申告等税法の解釈適用に当たっては、ご本人の責任において各顧問税理士や税務当局にご確認頂き、行ってください。

[参考] 2以上の号に該当する文書の所属の決定(国税庁HP)https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/inshi/01/01.htm 

①不動産の譲渡・消費貸借等に関する契約書(第1号文書) 

第1号文書は、次の4種類の文書が該当します。印紙税額は記載された契約金額に対して段階ごとに200円から60万円(一部軽減措置あり)が課されます。なお、契約金額が1万円未満のものは非課税です。(詳細は印紙税額一覧表参照) 

不動産、鉱業権、無体財産権、船舶若しくは航空機又は営業の譲渡に関する契約書(例:不動産売買契約書、著作権の譲渡契約書など) 

地上権又は土地の賃借権の設定又は譲渡に関する契約書(例:土地の賃貸借契約書など) 

消費貸借に関する契約書(例:金銭消費貸借契約書など) 

※利息は印紙税額を決定する記載金額には含まれません。 

運送に関する契約書(例:運送契約書、貨物運送引受書など) 

※乗車券や航空券等は含まれません。 

②請負に関する契約書(第2号文書) 

 契約内容が請負となるものが対象で、業務委託契約書など実務上判断が難しいのがこの2号文書です。詳細は個別論点として別にまとめますが、例えば、内容が「委任」のものや物品譲渡に関するもの(第1号文書を除く)は不課税文書請負に関する契約書に該当するものであっても、営業者間において継続する複数取引の基本的な条件を定めるものは③継続的取引の基本となる契約書(第7号文書)に該当する可能性があるためかなり注意が必要です。 

 ここでいう「請負とは、請負人がある仕事を完成させることを約束して、注文者がその仕事の結果に対して報酬を支払うことを約束する契約をいいます(民法632条)。一方、「委任」とは、委任者が法律行為をすることを受任者に委託し、受任者がこれを承諾するという契約をいい(民法643条)、法律行為をすることの委託ではない準委任も委任の一つとされます(民法656条)。ややこしいですが、仕事の成果物に対して報酬が発生するのが「請負」で、成果物に関係なく仕事の遂行に対して報酬が支払われるのが「委任」というイメージです。 

請負に関する契約書には、工事請負契約書、機械保守契約書、広告契約書、会計監査契約書、プロ野球選手や映画俳優等の専属契約書などが該当します。 

印紙税額は、1号文書と同様に記載された契約金額に対して段階ごとに200円から60万円(一部軽減措置あり)が課されます。なお、契約金額が1万円未満のものは非課税です(詳細は印紙税額一覧表参照) 。

③継続的取引の基本となる契約書(第7号文書) 

継続的取引の基本となる契約書とは、商品売買基本契約書や下請基本契約書など特定の相手方との間で継続的に生じる取引の契約書のことで、契約期間が3か月以内で更新の定めのないものは除かれます。 

これも判断が難しいものが多く、以下の4要件を満たせば7号文書に該当する可能性が高いですが該当しない場合でも、運送に関する契約書(第1号文書)や請負に関する契約書(第2号文書)に該当する場合があります。なお、印紙税額は1通につき4千円となっています。 

営業者間で締結される契約であること 

基となる契約が、売買、売買の委託、運送、運送取扱い、請負のいずれかに該当すること 

上記の売買などの契約に関して2以上の取引を継続して行うことが予定されていること 

2以上の取引に適用される取引条件のうち、目的物の種類、取扱数量、単価、対価の支払方法、債務不履行の場合の損害賠償の方法又は再販売価格の1以上を定めていること 

④金銭または有価証券の受取書(第17号文書) 

金銭または有価証券(小切手、手形、郵便為替などを含む)の引渡しについて、受領事実を証明するために作成し、その支払者に交付する証拠証書がこれに該当します。したがって、「受取書」、「領収証」、「レシート」、「預り書」はもちろんのこと、受取事実を証明するために請求書や納品書などに「代済」、「相済」や「了」などと記入したものや、お買上票などでその作成の目的が金銭又は有価証券の受取事実を証明するものであるも該当します。 

印紙税額は、受け取った金銭等の内容によって異なります。「売上代金に係るもの」は記載された受取金額に対して段階ごとに200円から20万円が課され、「売上代金に係るもの以外のもの」は受取書1通につき200円です。また、受取金額が5万円未満のものは非課税とされており、さらに第17号文書については「営業に関しない受取書」も非課税とされています。 

売上代金とは、資産を譲渡し若しくは使用させること(その資産に係る権利を設定することの対価を含みます。)又は役務を提供することによる対価(手付けを含みます。)、すなわち何らかの給付に対する反対給付であることをいいます。 

したがって、借入金、担保としての保証金、保険金や損害賠償金などは「売上代金に係るもの以外のもの」に該当します。 

また、営業とは、一般通念による営業をいい、おおむね営利を目的として同種の行為を反復継続して行うことをいいます。したがって、個人である商人や株式会社などの営利法人の行為は営業になりますが、商人以外の個人や公益法人等の非営利法人(一部例外あり)の行為は営業には当たりません。なお、医師、弁護士などが業務上作成する受取書も「営業に関しない受取書」として扱われ非課税となります。 

 

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