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所得税2020.10.05

低額譲渡の場合の法人・個人の課税関係まとめ

低額譲渡の場合の法人・個人の課税関係まとめ

本日は、法人・個人のそれぞれの課税関係を整理してご紹介していきます。

個人・法人関係まとめ

初めに、表で一覧化すると下記のような課税関係となります。

売り手側買い手側
個人→個人譲渡所得贈与税
個人→法人みなし譲渡所得受贈益
法人→個人
(役員・従業員)
寄付金
(給与)
一時所得
(給与所得)
法人→法人寄付金受贈益

それでは、詳しく見ていきたいと思います!

前提

時価100の土地を40にて譲渡(取得価額は50)

個人→個人

(1)個人(売り手)

実際の売却を基に、譲渡所得を計算します。

譲渡所得:収入金額40-取得価額50=▲10 ⇒ ゼロ

著しく低い価額とされる時価の50%未満(法人税法施行令第169条)で譲渡しているため、マイナスはないものとして取り扱います(法人税法59条2項)。

(2)個人(買い手)

著しく低い価額で譲渡を受けているため、時価との差額60(100-40)に対して贈与税が課税されます(相続税法第7条)。

個人→法人

(1)個人(売り手)

著しく低い価額の50%未満(法人税法施行令第169条)で譲渡しているため、時価の100にて譲渡があったとみなして譲渡所得を計算します(法人税法59条2項)。

※同族法人間では、著しく低い価額でない場合でも、時価との差額がある場合には、税務署長の権限により再計算をさせることができます(所基通59-3)。

(2)法人(買い手)

時価との差額60に対して受贈益として処理します(法人税法第22条の2 2項)

※法人税法では、みなし譲渡の定めはなく、時価との差額に対して益金を認識します。

法人→個人

(1)法人(売り手)

時価100のものを、著しく低い価額で譲渡しているため、その差額の60は寄付金として取り扱います。ただし、当該個人と雇用関係がある場合には、給与として取り扱います(従業員であれば損金算入ですが、役員であれば損金不算入となります。)。

(2)個人(買い手)

何かの給付に対しての対価ではないため、一時所得として取り扱います。ただし、雇用関係がある場合には給与所得として取り扱います。

法人→法人

(1)法人(売り手)

寄付金として取り扱います。

(2)法人(買い手)

受贈益として取り扱います。

参考条文

法人税法第59条  贈与等の場合の譲渡所得等の特例

1 次に掲げる事由により居住者の有する山林(事業所得の基因となるものを除く。)又は譲渡所得の基因となる資産の移転があつた場合には、その者の山林所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算については、その事由が生じた時に、その時における価額に相当する金額により、これらの資産の譲渡があつたものとみなす。

一 贈与(法人に対するものに限る。)又は相続(限定承認に係るものに限る。)若しくは遺贈(法人に対するもの及び個人に対する包括遺贈のうち限定承認に係るものに限る。)

二 著しく低い価額の対価として政令で定める額による譲渡(法人に対するものに限る。)

2 居住者が前項に規定する資産を個人に対し同項第2号に規定する対価の額により譲渡した場合において、当該対価の額が当該資産の譲渡に係る山林所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算上控除する必要経費又は取得費及び譲渡に要した費用の額の合計額に満たないときは、その不足額は、その山林所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算上、なかつたものとみなす。

法人税法施行令 第169条  時価による譲渡とみなす低額譲渡の範囲

法第59条第1項第2号(贈与等の場合の譲渡所得等の特例)に規定する政令で定める額は、同項に規定する山林又は譲渡所得の基因となる資産の譲渡の時における価額の2分の1に満たない金額とする。

法人税法基本通達 59-3  同族会社等に対する低額譲渡

山林(事業所得の基因となるものを除く。)又は譲渡所得の基因となる資産を法人に対し時価の2分の1以上の対価で譲渡した場合には、法第59条第1項第2号の規定の適用はないが、時価の2分の1以上の対価による法人に対する譲渡であっても、その譲渡が法第157条《同族会社等の行為又は計算の否認》の規定に該当する場合には、同条の規定により、税務署長の認めるところによって、当該資産の時価に相当する金額により山林所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額を計算することができる

相続税法 第7条  贈与又は遺贈により取得したものとみなす場合

著しく低い価額の対価で財産の譲渡を受けた場合においては、当該財産の譲渡があつた時において、当該財産の譲渡を受けた者が、当該対価と当該譲渡があつた時における当該財産の時価(当該財産の評価について第三章に特別の定めがある場合には、その規定により評価した価額)との差額に相当する金額を当該財産を譲渡した者から贈与(当該財産の譲渡が遺言によりなされた場合には、遺贈)により取得したものとみなす。ただし、当該財産の譲渡が、その譲渡を受ける者が資力を喪失して債務を弁済することが困難である場合において、その者の扶養義務者から当該債務の弁済に充てるためになされたものであるときは、その贈与又は遺贈により取得したものとみなされた金額のうちその債務を弁済することが困難である部分の金額については、この限りでない。

法人税法 第22条の2  

1 省略

2 内国法人が、資産の販売等に係る収益の額につき一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従つて当該資産の販売等に係る契約の効力が生ずる日その他の前項に規定する日に近接する日の属する事業年度の確定した決算において収益として経理した場合には、同項の規定にかかわらず、当該資産の販売等に係る収益の額は、別段の定め(前条第4項を除く。)があるものを除き、当該事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入する。

※内容は、執筆現在当時の法令等に基づいております。文中の税法の解釈等見解にわたる部分は、執筆者の私見ですので、実際の申告等税法の解釈適用に当たっては、ご本人の責任において行ってください。

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